マンション管理への影響とその対応策

国外に住所がある者や外国人居住者の割合が同じマンションで増えていくと、これまでと同じようなマンション管理の進め方では様々な支障がでてくる可能性があります。

実際、マンション管理業者からは、「外国人の方々が多くおられるマンションの場合、規約上は拘束力がない中で、連絡が取れない、何か郵送するときに誰が負担するのかという話になる。」「居住されている外国人で日本語が堪能でない場合に、役員になってもらえず、新築で管理組合を立ち上げる時に、1期目の役員の選任に苦労することがある。」といった声も聞かれます(※1)。

ただし、日本は世界貿易機関(WTO)の「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」のもとで、不動産取得に関して内外無差別の原則を採用しています。そのため、安全保障のための例外(GATS14条の2)を除き、外国人であることを理由に不動産取得を法的に禁止することは、国際的義務との整合性から極めて難しいとされています。

そのため、まずできることは、たとえば、買い手が外国資本の法人や外国人の場合、売買契約時の重要事項説明において、日本のマンション管理の仕組みや区分所有者としての義務やルールなどの説明を義務化することなどが考えられます。

さらにそれぞれのマンションで総会を開き、区分所有者が外国居住者の場合には国内管理人の届出を義務とする管理規約の改定を決議することも有効です。これにより、マンション管理上のリスクを軽減できる可能性があります。

国土交通省からはすでに、マンション標準管理規約において国内管理人の選任を義務付ける場合の規定例が示されています。

2026年4月1日施行の区分所有法改正に伴い、多くのマンションで管理規約の一部改正が必要となるので、この機会を生かして、国内管理人に関する届出ルールを導入するかどうかについても、管理組合で議論することが重要でしょう。

いずれにしろ、外国人所有者の増加に関する全容解明には国や自治体によるさらなる調査とともに、その円滑な把握にむけた仕組みづくりが急務です。客観的なデータ分析を通じて、冷静に政策的な対応を積み重ねていくことが必要不可欠です。

文/野澤千絵

『マンション高騰の真実-都市部の「非居住化」が街を壊す』(中央公論新社)
野澤千絵
『マンション高騰の真実-都市部の「非居住化」が街を壊す』(中央公論新社)
2026年8月7日
1056円(税込)
216ページ
ISBN: 978-4121508706
★マンションを買っているのは誰だ?
徹底調査で実態を解明。どうりで家が買えないはずだ!
都心、駅近に住みたい人、必読です。


誰がどんな目的で、好立地の高額マンションを買っているのか。
著者は登記簿等を徹底解析し、国内外の富裕層や法人が、新築のみならず中古まで買い漁っている実態を明らかにした。
多くは転売・資産保有等の目的で抱え込まれ、住まないうえに売却時も住みたい人には売られない。
どうりで買えないはずだ。

非居住化問題は、この先、マンション管理や都市政策に多大な影響を及ぼしかねない。
住宅を住みたい人の手に取り戻せ。
amazon