金正恩は当然、善意で助けているのではない

北朝鮮は2024年、1万1000人を超える兵士をロシアへ派遣した。クルスク州には約1万4000人が投入され、6000人以上が死亡したと報じられた。さらにロシアが3万人規模の追加派兵を求めたとの情報も出た。

武器の量も大きい。北朝鮮からロシアへ送られた武器と砲弾は約2万8000個のコンテナに達し、152ミリ砲弾に換算すれば1200万発を超える。

北朝鮮製の弾道ミサイルもウクライナへの攻撃に使われた。ロシア軍の不足を埋めているのは、北朝鮮の兵士と武器である。

ロシアを後方支援する北朝鮮の金正恩総書記
ロシアを後方支援する北朝鮮の金正恩総書記

金正恩は当然、善意でロシアを助けているのではない。

食料、燃料、外貨、軍事技術、外交上の後ろ盾を受け取る。北朝鮮軍は現代戦の経験を積む。自国製ミサイルがどこまで飛び、何発が迎撃され、どこが壊れたかという実戦データも手に入る。

プーチンは今日の戦線を守るために、明日の東アジアを危険にしている。無論、日本の安全保障上の脅威となる。

しかも、砲弾が足りないロシアに供給国を選ぶ余裕はない。金正恩は足元を見られる側ではなく、見る側になった。支援が長引くほど、ロシアが払う代価は重くなる。両国の関係は、その場しのぎの武器取引でもないようだ。

2024年には包括的戦略パートナーシップ条約を結び、2027~2031年の軍事協力計画へ進んでいる。北朝鮮は非常用の弾薬庫から、ロシアの戦争を支える正式な軍事協力国へ変わった。

ロシアのために動いている国は1つもない

プーチンの外交はどうなのだろう。国際刑事裁判所が逮捕状を出して以降、プーチンは主要な国際会議への対面出席を避けてきた。かつては、誰と会うかを選ぶ側だった。いまは、どの国なら安全に入れるかを考え、相手の顔色を読む側である。

2024年6月には24年ぶりに北朝鮮を訪れた。平壌の価値が上がったのではない。ほかの扉が閉じてしまっているのだ。

インドは必要な時だけ原油を買う。中国は安く買い、制裁の危険は負わない。北朝鮮は兵士と砲弾を出す代わりに、ロシアから技術と金を取る。3カ国のうち、ロシアのために動いている国は1つもない。誰もがロシアの弱みを利用し、自国の利益を積み上げている。

一番得をしているのは金正恩である。長く制裁を受け、孤立してきた北朝鮮が、核大国ロシアから必要とされる。兵士と武器を差し出し、金、食料、燃料、技術、外交上の後ろ盾を受け取る。立場を上げたのは北朝鮮であり、選択肢を失ったのはロシアである。