ロシア経済は崩壊していない。しかし…

なぜプーチンは、ここまで弱い立場に落ちたのか。

原因はウクライナ戦争である。

いまだ収束の見通しが立たないウクライナ戦争
いまだ収束の見通しが立たないウクライナ戦争

ロシア経済は崩壊していない。しかし、戦争を続けながら国を豊かにする道は閉じた。2026年第1四半期のGDPは前年同期比で減少し、成長率見通しも引き下げられた。

物価は高く、政策金利は14%に達している。企業は借金をして工場や設備を増やしにくく、家計も住宅や車を買いにくい。

軍需工場が動けば、GDPの数字は増える。兵士に高い契約金を払い、戦車や砲弾を大量に造れば、統計上は需要が生まれる。

だが、前線で壊される戦車は住宅にも道路にも工場にもならない。軍需へ人、資材、予算を集めるほど、普通の企業は細る。戦時景気は成長ではない。将来使うはずだった人と金を燃やして、現在の体面を保っているだけだ。

ロシアの財政にも余裕はない。2026年上半期の連邦財政赤字は5.73兆ルーブルに達し、当初の通年計画を半年で上回った。戦費は削れず、燃料不足や景気減速への対応も必要になる。足りない分は増税、国債、歳出削減のいずれかで国民へ回る。

プーチンが積み上げた死者と負傷者

ここでも中国の存在が重くなる。ロシアは石油と天然ガスを売って外貨を稼がなければならない。ところが欧州を失った以上、大口の買い手は限られる。

中国はその事情を知った上で契約を引き延ばし、より有利な条件を待てる。ロシアの財政悪化は、中国にとって交渉材料なのである。

さらに、戦場がロシア国内へ戻ってきた。

ウクライナの長距離ドローンは、ロシア各地の製油所を攻撃している。ウクライナ支配地域から約2700キロメートル離れたオムスクの大規模製油所も攻撃を受けた。

ロシア政府は燃料不足を抑えるため輸出を止め、ベラルーシからの輸入を増やし、地方の燃料をモスクワへ回した。

石油大国が、自国の給油所を守るために燃料を外国から買う。これは小さな失敗ではない。プーチンがウクライナへ持ち込んだ戦争が、ロシア国民の日常へ戻ってきたのである。

もっと深刻なのは兵士の不足だ。

ロシア軍は大量の兵士を投入し、わずかな土地を取る戦いを続けてきた。だが、2026年には月間の死傷者数が新規募集数を上回った。補充するより早く兵士を失い、4月と5月には占領地も純減した。

プーチンが積み上げているのは戦果ではない。死者と負傷者である。