中国は観光客だけではなく、政治的な摩擦まで輸出したのだ

本来、中国人旅行者は高市政権を罰する責任も、中国共産党を代表する責任もない。だが、国家が旅行を制裁に使った瞬間、個人は政治の看板を背負わされる。

中国が輸出したのは観光客だけではない。政治的な摩擦まで輸出したのである。

中国人観光客の争奪は、これからも各国の思惑の中で揺れ続けるだろう。安く近い行き先へと旅行者が流れる構図は変わらない。

だが、その財布を当てにする国は、外交がこじれた瞬間に客が消えるリスクと、戻った瞬間に噴き出す摩擦を、同時に抱え込むことになる。

日本で薄れた喧噪は韓国で濃くなった。次にどこへ移るのかは分からない。確かなのは、国家が旅行者を政治の駒にする限り、割を食うのは看板を背負わされた一人ひとりの旅行者だという事実である。

文/小倉健一