結婚が終わった瞬間

そのとき夫の目が背中に向けられるのを感じました。彼は突然手を出してきて、皿やグラスを実に丁寧に入れ直したのです。いっぽうでファーマーさんはそれを再度入れ直し、乱雑に積み上げたのでした。

その瞬間、ファーマーさんには抑えられないような衝動と怒りがこみあげ、夫を敵対視するようになったというのです。結婚が終わった瞬間だと感じたのです。

皿を入れ直した夫の行動に抑えられない怒り(写真はイメージ/shutterstock)
皿を入れ直した夫の行動に抑えられない怒り(写真はイメージ/shutterstock)

彼女は自分が結婚後別の人間になってしまったと感じました。夫婦の間の関係は、ロマンチックというより機能的で、むしろルームメイトのようだと感じたのです。

彼女は言います。これは45歳から65歳の女性が結婚に見切りをつけるという、近頃増え続ける「立ち去る妻」の現象であると。

イギリスの中年女性のオンラインコミュニティである「ヌーン」(Noon)が作成した報告書によると、離婚のほぼ半数が中年女性主導で申し立てられ、56%の女性が「不幸」を理由に結婚を解消したいと述べているというのです。

「立ち去る妻」の3分の1は、離婚後に「これまで以上に幸せだ」と感じたと述べています。

ファーマーさんは2022年に離婚します。そしてまったく後悔しなかったというのです。

中年期にある自分たちは統計的に90歳以上まで生きる可能性があり、まだまだ長い時間が待ち受けているので、別の選択肢を選ぶ道もあるべきだというのです。幸福が減っていると感じたら、女性が妥協するべきではないと感じたのです。

ファーマーさんの結婚生活も最初の頃は順調でした。

しかし仕事と子育ての両立は大変むずかしく、子育ての大半は彼女が担当。夫との財力やキャリアとの間にギャップが増えて、夫婦の関係が変わってしまいました。しかも息子の一人は自閉症を抱えていたのです。他人からも厳しい目を向けられるので、家族は誕生日パーティーに招待されることもありませんでした。これはイギリスでは社会的な死を意味します。