「100点の育児は目指さない」強く、機嫌よく笑うパパで

動画を見る限りは、可愛いばかりのようた君。しかし、動画には映らない生活がある。育児、仕事、家事……そのすべてをひとりで担う状況を、えむとしさんはトリプルパンチと語る。シングルファザーとして、いちばん大変なことを尋ねると、

「ざっくり言うと、もう全部忙しいですね。全部がいちばん大変です(笑)。ただ、その解像度を上げると、すべてにつながっているのは体調管理。(自分が)熱が出てもご飯を作り、お風呂に入れないといけないし、明日の準備もしてから寝かせないといけない。日常的に自分は後回し。足を骨折したとしてもそうしないといけないのは、事実なので。そうならないためにも日々の健康や体調管理は徹底的に気をつけています」

自分が倒れれば、家庭を支える大人がいなくなる。その責任感とプレッシャーは計り知れない。穏やかで紳士的なえむとしさんを孤独にさせるのは“お子さんがいるんだから、ひとりじゃないでしょ?”という言葉なのだという。

「物理的に子どもがいるので“ひとりじゃない”“孤独じゃない”と、第三者は思うかもしれません。息子はたしかに、癒しであり、支えです。ただ、相談相手ではないんですね。

息子が3歳のとき、初めてふたりで鬼怒川温泉に旅行に行ったんです。いろんなところに連れていって、温泉旅館に泊まって。息子を寝かしつけて、ひとりでお酒を飲んでいたときにふと孤独を感じましたね(笑)。

“あー、疲れた”“でも、今日も楽しかったね”“子どもがたくさん笑ってくれてたね”って言い合える人がいない。やっぱり大人同士で話し合えたり、悩みを共有したり、共感し合ったりすることができないことは、より孤独を深める気がしています。

日々、育児に奮闘し、自分自身と闘いながら自問自答し、息子の成長を見て自分の気持ちに折り合いをつけているところもあります」

初めてふたりでいった温泉旅行(写真/えむとしさん提供)
初めてふたりでいった温泉旅行(写真/えむとしさん提供)

そんな中で、えむとしさんは100点の育児を目指さないことも意識しているという。

「特にひとりで子育てをしていると“ちゃんとしなければいけない”“親の責任を果たさなければ”という重圧がのしかかりますが、少し肩の力を抜いて、日常を楽しんでいるぐらいがちょうどいいのかなと思っていて。

テストでいい点を取らせるとか、大学に行かせるとか、そういったことではなくて。やっぱり子どもが毎日生き生きと笑顔でいられて、帰れる場所があること。だからこそ、学校で頑張れたり、たとえトラブルがあってもそれを家の人に話したりできる。そんな関係性がいいなと思っています。

困ったこと、悩んでいること、うまくいかないことを向こうから打ち明けられる、どこか友達のような関係性でありたい。師匠と弟子みたいな関係性では、絶対に相談してはこないので、そうならないように」

えむとしさんが目指す父親像は、強くも機嫌よく笑っているパパ。

「優しいだけでは誰も守れませんから。その強さがあればこそ、人の痛みがわかったり、優しくできたりするのかなと思うので。外では挑戦するけれど、家の中では子どもを見守れるような父親というか、人としてそんな存在になりたいです」

自分がシングルファザーとなり、ワンオペ育児をしようとは。えむとしさんは、若かりし頃には予想だにしなかった未来を生きている。

「いい日も、悪い日もあって。この先の未来への不安もたくさんありますが、息子と会話したり、一緒にお風呂に入ったり、笑顔や寝顔だったり。“今日も無事に終わったな”と思える瞬間が、自分の中でいちばん幸せを感じる瞬間ですね」

大人同士で悩みを共有できない孤独や、自分を後回しにするハードな現実に直面しながらも、えむとしさんは「誰かに元気を与える側になりたい」と前を向く。東京から青森へと場所を変え、困難を抱えながらも挑戦を続けるその背中は、同じ空の下で奮闘する多くの人々に、「不完全でも、共に笑い合える日常」の尊さを伝えている。

えむとしさんとようた君のペースでこれからも歩んでいく(写真/えむとしさん提供)
えむとしさんとようた君のペースでこれからも歩んでいく(写真/えむとしさん提供)
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取材・文/池谷百合子

(写真/えむとしさん提供)