『挿入あるのが普通だよ』
その頃の康子は男遊びを少し休んでいた。
度々の危険な目にあったことで、辟易していたこともあったし、年齢も50代半ばに差し掛かり、新しい出会いを得るのは難しいのではという判断もあった。
そんな最中、夫の単身赴任が決まった。ちょうど子育ても一段落し、自由に動けるタイミングでもあった。
夫からは十分な生活費を貰っていたし、自らも働いていたので金銭的にはある程度の余裕もある。もともとアクティブな性質もあって、康子は当時、ブームに火が点きつつあった女風を利用することに決めた。
最初に予約を入れたのは、大手の某有名店だった。康子は30代前半から半ばのセラピストを選んだ。
「やっぱり、ときめきっていうか、自分よりちょっと若いおにいさんにチヤホヤされたいっていうか、その間だけは彼氏彼女みたいな雰囲気を味わいたいので、なるべく自分好みの人っていうのがいいんですよね。実際、すごくいい人だったし、接客も施術もよかったんです」
しかし施術の終わり近くになって予想外のことが起きた。
「女風って一応は挿入なしっていうことになってるじゃないですか。けど『挿入あるのが普通だよ。希望するお客さんも多いし。入れる?』みたいなことをいわれて。衝撃的で『ええーっ!』ってなりましたよね。
わたしはそこを希望していたわけじゃなくって。前戯的な行為で気持ちよくさせてくれればよくって、挿入はなくてよかったので」
ゆえにそのセラピストをリピートはしなかったものの、以後、月イチほどのペースで女風の利用を重ねる中、幾度かモヤッとする対応に遭遇することとなった。
「当時、わたしは50代半ばだったんですが、わたしの歳とか見た目とかが原因だと思うんですけど、セラピストから『えーっ』っていうような扱いを受けたことがわりとあったんです」
プロであるのだからすべての顧客に満足いくサービスを与えることが当然ではあるものの、人によって好みがある以上、上ブレ下ブレが生じてしまうのもまた仕方がない。
が、不潔であるとか、あまりに尊大な態度で接してくるとかならばともかく、年齢を原因にサービスのクオリティを落とすのはプロとしてふさわしい態度とはいえない。
文/大泉りか













