「参加を希望しない人に対して無理やり参加させると、違法性を帯びる可能性があります」

従業員の男女比はおよそ半々という同行が実施した8月の研修には80人が参加。事前に同意を得た参加者にのみ実施したという。

「参加者からは同意書で同意を得た上で実証しております。例えば体調不良があるとか高血圧があるなど、なにか持病があって気になるということで何名か辞退された方もいらっしゃいます」

生理痛体験研修の様子(提供/株式会社山梨中央銀行)
生理痛体験研修の様子(提供/株式会社山梨中央銀行)

研修終了後、男性の参加者からは「落ち着いて座っていられないような痛みを感じた。継続すれば相当なストレスだと思う」「非常に大変だと理解できたので、寄り添っていきたい」などの感想が、また女性からは「今回の生理痛体験はあくまで一例で、人それぞれ痛みが違うと思うので、理解する姿勢が大切だと思った」などの感想が聞かれたという。

年明けの1月には、一般行員に向けてイベント型の研修を実施する予定だと担当者は話した。

企業での研修が少しずつ広がっている生理痛体験をめぐっては、「強要したら暴行罪などにあたるのでは?」といった声もSNS等で聞かれる。

民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける古藤由佳弁護士(弁護士法人・響)は次のように説明する。

「男性管理職の生理痛体験は、具体的には下腹部にEMS(筋電気刺激)パッドを装着し、電流を流すことで子宮収縮のような痛みを人工的に再現するものとされており、人の身体に対する不法な有形力の行使として、客観的には暴行罪(刑法208条)に該当する行為です。

写真はイメージです(PhotoAC)
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ただし、参加者が、当該体験の趣旨・目的を理解し、自ら参加するのであれば、被害者による保護法益の放棄(傷害罪の保護法益は、人の身体の安全)があったとして、初めて行為の違法性がないものと判断されることになります。

男性管理職に生理痛体験をさせることの趣旨は、生理痛に悩む女性社員への理解を深めることですが、これは、究極的には女性社員から体験談を聞くなど別の方法でも達成できることです。したがって、参加を希望しない人に無理やり参加させると、違法性を帯びる可能性があります」

果たして企業での実施はどの程度広がっていくのか。今後の動向に注目したい。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班