「政府は生産量しか見る気がない…補給金では利益は出ません」
この間、JA(農業協同組合)や全農(全国農業協同組合連合会)が果たした役割をどう評価しているか。
「今年はJA、全農が頑張りましたね。熊本県の阿蘇での概算金(コメ農家から集荷する際に発生する前払い金)の発表の場で私も講演をしたのですが、彼らは『自分たちがしっかりしないから色々な商社が入り込んで統一性がなくなり、大変になる。だからJAがしっかりした概算金を出すことによって、JAにコメが集中して計画的に社会に行き渡るように販売ができるんだ』という趣旨の発言をしていました。
JAも卸業者と一緒で、在庫を抱えている状態で市場の相場が下がれば価格を下げざるをえなくなるし、いつ値崩れを起こすかわからないです。来年、極端に概算金を下げることはしないでしょうが、さすがに今よりは下がるでしょうね」
猫の目のように変わる農業政策も、農家や消費者を痛めつけてきた。
「僕が一番問題視しているのは、コメ作りに限ったことじゃありませんが、政府は生産量しか見る気がないということです。本来は個々の生産者の年齢を見て、5年後、10年後を想像した時にその人たちがまだ農業ができるのかをちゃんと考えた政策じゃないとダメだと思っています。
農家は天候、特に異常気象に左右されるので、そうした際に大きく赤字にならないように調整していかないと基本的には成り立たない。
もちろん野菜指定産地制度など、野菜の価格が暴落時の補助金などもありますが、申請の手間もあるしスピーディーじゃない。補助金では利益は出ませんし、市場に持って行って赤字になるよりはいいという程度のものです。
政治家は物価高対策は給料を上げればいいと思っているようですが、給料が増えたから高いコメや野菜を買おうという発想になる人はあまりいないでしょう。結局、買われなければ余って相場は下がります。多くの農産物は生産抑制できないんです。
一昨年の秋は大根が豊作過ぎて、農家が『市場に大根を捨てに行く』と話題になりました。供給過多に陥って売れない状況になり、といっても廃棄するとなるとお金がかかるから市場に持ち込んだんです。大根2000ケースを引き取るのに市場が100円とか200円を支払ったそうですよ。
無料でもらうのは生産者に申し訳ないからという理由のようだけど。その影響で、去年から大根農家が減った上に猛暑が重なり、今年は大根が高騰していますよね。農業は生産量だけでなく、様々な部分に目を向けていかないといけないと思いますね」
生産者と消費者を守り、食料自給率を高めて国力の維持に努める。それが政府に求められる至極当たり前の仕事ではないのか。
※「集英社オンライン」では、今回の記事についての情報、ご意見を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com
X(旧Twitter)
@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













