出席者の中には「ここに出てくれてありがとう」と言って泣き出す人も

支持者が10月13日に市内のホテルで開いた「市民対話会」と題した会合は、市民ならだれでも参加できる場ではなかった。

「2日ほど前から小川市長のコアな支持者らが個人のフェイスブックなどで告知をしていましたが、主催者は『市民有志一同』と名乗るだけ。

メディアは受け付けず、市内在住を確認するための免許証やマイナンバーカードを持参するよう求めました。しかもネットで申し込んだ人には直前にメールで開催場所の変更が告げられました」(地元記者)

市民対話会の告知
市民対話会の告知
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対話会は1回50分で6回開かれ、20人ずつ計120人が参加。会場周辺ではメディアに対して参加者から「マスゴミ」などと罵声が飛んだと文春オンラインは報じている。

その対話会の内容を長文の一問一答形式で整理した「開催報告」のURLが15日夜ごろから支持者らのSNSに掲載されている。そこからは職を辞さないという小川市長の強い意志と報道への不満がうかがえる。

記録によると市長は各回の冒頭で、部下とラブホテルへ行ったことは事実だが男女関係はなかった、とこれまでと同じ説明をした。

続けて「公式に伝えているものとは異なる情報」が報じられ苦慮しているとし、メディアの“誤報”が騒ぎを大きくしているとの認識を披露。例として「ラブホテルまで公用車で行った」「大雨警報が出ているのに災害警戒本部にいなかった」などと伝えられているが、それは事実と違うと主張したという。

市民対話会の開催報告
市民対話会の開催報告

だがメディアが報じたのは、正確には、市長が部下職員X氏の待つ場所まで公用車で行き、X氏の車に乗り換えてホテルに乗りつけたという指摘や、「記録的短時間⼤⾬情報」が発表される中でもホテルに行ったという指摘だ。

市長は実際の報道内容を微妙に変えて説明し、それを誤報と主張した可能性がある。

そして冒頭発言の最後には「大きな失敗をしてしまったからこそ、変わり始めた前橋を止めてしまうのでなく、地域のために信頼回復を取り戻すにはどうしたらよいかを一緒に考えていけたら」と表明。この時点でほとんど“続投宣言”に近い発言をしていた。

10月2日、メディアの囲み取材で話す小川晶市長(撮影/集英社オンライン)
10月2日、メディアの囲み取材で話す小川晶市長(撮影/集英社オンライン)

質疑に入り、今後どうなるかを問われると「まず自分が続投するのかどうか決めなければいけない。決めた後、議会が決める。議会から辞職勧告案が出れば、ふたたび私にボールが戻ってくるし、不信任決議案が出たら議会解散か辞職となる」と回答し、辞職をしない自分に市議会が辞職勧告や不信任を議決する展開があることを説明。

さらに「出直し選挙にしろ、任期満了後の選挙にしろ、どこかで市民の皆さんに審判を仰ぐ日が来る」と明言した。

不信任議決を受けて失職や辞職をしても、出直し市長選に出馬し、この危機を任期満了まで乗り切れば2年後の次期市長選に出る考えを示した。

対話会の記録を読むと、出席者は「(市長が)ここに出てくれてありがとう」と言って泣き出す人がいるなど、その大部分が支持者だったようだ。だが中には辞職して選挙で信を問うべきだと求めた人も2人いた。

1人目の要求に市長は、メディアが押し掛けてくるので外部イベントの出席は控えてきたが「来週以降はイベントにも出ると思う」と、かみ合わない答えを返す。

別の人から2度目の辞職要求が出ると、今度は「ご意見として受け止めます」と受け流した。

そして4日後の17日夕、小川市長は「選挙の時の公約を1日でも早く果たしてほしいという市民の強いお言葉をいただき、ここで退くのではなく、掲げた公約を実現することが私に課せられた責任であると改めて職責の重さを感じるに至りました」と続投を宣言。

自らのけじめは報酬を半分削減するとし、必要な手続きの承認を市議会に求めると表明した。

「辞任や出直し選挙等も考えました」とは口にしたが、市民対話会自体が続投表明への“道ならし”として開かれた気配だ。