そもそも管理費や修繕積立金を払わないという悪質なケースも

将来のための値上げに反対するだけではなく、そもそも管理費や修繕積立金を払わないという、悪質なケースもある。

「投資目的で購入した中国人オーナーが管理費や修繕積立金の引き落とし口座にお金を入れず、長期間にわたって滞納しており問題になっている」

筆者が取材のために訪れた東京都港区のタワマンで、管理組合の理事はこう明かした。このタワマンは東京タワーを望む眺望で中国人からの人気も高く、ロビーなど共用部では中国語を多く耳にする。

ファミリータイプの部屋であれば最低でも2億5000万円を超えるような高級マンションだが、住民向けに発行されているニュースレターには、「管理費等の長期滞納者対応について」という項目が毎月のように記載されており、実際に対応に悩んでいるという。

そうした投資家の間では、管理費や修繕積立金を数年間にわたって意図的に払わず、そのまま物件を売却することで踏み倒すというケースもあるという。月々の費用は数万円に過ぎないが、これが数年単位となると数百万円にのぼることも珍しくない。

湾岸エリアのあるタワマンでは、外国籍の法人が約5年間に及び管理費を払わず、利息や遅延損害金も含めて1000万円を超える請求を求め裁判になったケースもあるという。

管理の崩壊という時限爆弾

管理費や修繕積立金の上昇を嫌う住民が多数派となり、延滞で払わない住民が増えれば、マンションの管理は荒れることが確実だ。

特に、大規模マンションのように共用部が豪華であれば、汚れや荒れは目立つようになる。管理や修繕の問題は同じ共同体に住む人間として共通意識の醸成が不可欠だが、大規模であれば大規模であるほど、難しい。

「管理費を中国人オーナーが支払わない」「修繕積立金が3倍に爆増で生活激変」…マンション襲う「管理の崩壊」という時限爆弾_3
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既に、管理組合が想定する以上のペースで人件費や工事費が上昇しているとの指摘もある。人件費が上昇する中、朝から夕方まで常駐するはずだったコンシェルジュが半日しか勤務しなくなるといった、目に見える形で住民サービスが下がることも現実に発生している。

冒頭のAさんは修繕積立金の上昇に不満タラタラといった様子だったが、本人が気づいていないだけで、管理がしっかりしたマンションに出会えたことは幸運だと言える。

郊外の物件ということで投資目的の購入が少ないことからも、住民間の合意形成がしやすいことも追い風だ。

もっとも、湾岸や港区のタワマンのように、外国籍や投資目的の住民の比率が高い物件の場合、現在のような管理状態が将来にわたって続くという保証はない。

インフレとともに現在のような上昇相場が続く中で目先のことだけを考える住人が多数派となって「ババ抜き」が過熱し、管理の崩壊という時限爆弾が破裂する可能性も、ゼロではない。

文/築地コンフィデンシャル