聖地移住の成功例は?

――移住してうまくいく人、いかない人がいると思いますが。

聖地移住は一般的な地方移住と比較すると、割とうまくいく確率は大きいのではないかと考えています。なぜなら聖地移住者の皆さんの入り口は聖地巡礼で、少数の事例は除いては、数年間、聖地巡礼を重ねているうちにその街自体が好きになり、移住を意識しだすからです。

その点、「地方に移住したい」という漠然とした気持ちから始まって、移住地を探してマッチングを重ねる一般的な地方移住とは少し異なるのではないかと。聖地移住は「その土地ありき」なんです。

移住前に地域のことをどれだけ知ったかが移住の成否を分ける、というのは皆さん口をそろえて言うことですが、聖地巡礼からの聖地移住はその点でもアドバンテージがあるのではないかと思います。

聖地巡礼ファンのようにリピーターとなり、地域活動などにボランティアとして参加したり、地域と関係をもつ人々のことを「関係人口」と言います。関係人口は「観光以上、移住未満」とも言われています。

例えば『らき☆すた』ファンが地元・鷲宮の祭りで「らき☆すた神輿」を担ぐなど、地域との深いかかわりを10年以上も続けています。聖地移住はこうした「関係人口」から「定住人口」への望ましいステップアップの典型例ではないかと思うんですよね。

その意味では聖地移住でうまくいっている方は、「『〇〇』というアニメが好きだから」という気持ち以上に、「この(聖地の)街とそこに住む人々が好きだから」という気持ちが強いです。だからこそ、移住後も自治会などの地域活動に協力しますし、地元の方からの信頼も厚いように思えます。

逆に単にアニメが好きだからという理由だけで移住してしまうとどうなるでしょう。聖地巡礼ファンはリピーターが多いからと言っても、いずれアニメ作品の終了とともにピークアウトしてしまうことは避けられません。

そこで移住してからもアニメファンとだけつるんで、地域の付き合いを疎かにしていたら孤立してしまいますよね。また、「アニメで地域を盛り上げたい」という思いだけが先行して地元の感情を考慮に入れないと、地域で「浮いた」存在になってしまいます。

バランスよく、自分の好きなコンテンツと地域のリアルを見つめる視点が必要ではないかと思います。

鷲宮地区の八坂祭における「らき☆すた神輿」(ふっちさん提供)
鷲宮地区の八坂祭における「らき☆すた神輿」(ふっちさん提供)