そもそも夏休みの存在自体を見直すべき?

東京都市大学人間科学部の准教授で“子どもの生活習慣”研究者である泉秀生氏に現代の子育て、夏休みの問題点や解決策など話を聞いた。

「令和の子育ての問題点は、夏休みも含め親子で一緒に過ごす時間が不足していることです。居場所のない夏休みを持て余す子が増えているいま、あえて子どもとの時間を積極的に持ってみてはいかがでしょうか。

ただ、親の働き方や収入の差に応じて、体験格差が広がってしまうことも懸念しています。自宅でいつもひとりで過ごしていた子どもは、夏休み明けに友達から『家族で旅行に行ったよ』『バーベキューしたよ』などと話を聞くと孤独感を抱いたり、閉鎖的な気持ちになります。それは自己肯定感の低下につながることもあります。

何も、お金をかけて旅行や遠出をする必要はありません。ポイントは“非日常”です。普段なかなか一緒にできない、自宅の周りを散歩する、トランプをする、フルーツポンチを一緒に作るなどで良いんです。親子のふれあいの時間を大切してほしいです」

写真はイメージです(PhotoAC)
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いっぽうで「疲れていて精神的余裕がないため、それができない親もいる」と、泉氏は子どもと過ごす時間が減ってしまう現実に理解を示す。

「現代では、子育て中の共働き世帯が7割を占めています。夏休み、『本当は一緒に過ごしてあげたい』と思っている親は少なくないはずです。しかし、仕事や家事に追われ、日常生活をやり過ごすことに精一杯。

本来であれば、2015年に女性活躍推進法が成立すると同時に、国全体で“子どものための居場所づくり”を行うべきだったと思います。成立後に、慌てて保育園や学童を増やしたものの、夏休みの子どもたちの悲痛な声を聞くと十分とはいえないと思います」

これから、国や自治体は子どもたちのためにどのような取り組みを行うべきなのか。

「商業施設に子どもたちだけで行くことを禁ずる学校もありますし、図書館は会話ができない。子どもたちだけで気軽に行けるコミュニティーセンターや児童館を充実させる必要があると思います。

また、すでに一部の自治体で導入されている、中高生や教員を目指す大学生のボランティアが小学生に勉強を教えたり、触れ合うのはとても良いと思います。将来、父と母になる可能性のある子たちですから、教育の面では大切なことです。

写真はイメージです(PhotoAC)
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ただ、ヤングケアラーの問題もありますし、無償でやらせるよりも対価として図書カードや商業施設で使えるチケットやクーポンなどの付与があると社会の仕組みに触れるひとつにもなり良いと思います。

そもそも、約40日間の夏休みが必要かどうかを検討するときがきたのではないでしょうか。天候も大きく変わり、専業主婦の多かった時代のままで良いとは思えません。夏休みはお盆期間程度にして、他の日数は春休みや秋休みに割り振るなど見直しても良いのでは」

40日間の夏休みが、なくなる日も遠くないかもしれない。

取材・文/山田千穂 集英社オンライン編集部ニュース班 サムネイル/PhotoAC