ペットだけでなく、人を想ったり想われたりすると幸福度が上がる
「祈り」は、形式や様式こそ異なるものの世界で行われる共通のアクションです。じつは、「祈り」には心を安定させる効果があることもわかっています。
サンフランシスコ総合メディカルセンターの医師・ランドルフ・ビルドは、心臓治療のために入院している393人の患者を対象に「祈り」に関する実験を10か月以上にわたり行いました。
彼は、患者たちをランダムに、他者から早い回復や非重症化や死亡の回避などの祈りを捧げられるグループと、何も行わないグループに分けました。
祈りを捧げる人たちは全国のさまざまな教会から募集し、1人の患者に対して3~7人を割り当てたのですが、祈りを捧げられたグループの患者たちは、捧げられなかったグループの患者たちよりも呼吸補助、抗生物質、利尿薬を必要とせず、重症度が低かったといいます。
こうした背景には、各人の病気の差異や個体差もあるため、絶対的な効果が見られたとは言い切れないでしょう。また、プラセボ効果よろしく、祈りを捧げられたことで安心感を抱き、思い込みの力によって一時的に体調が良好になったといったケースもあるかもしれません。しかし、祈りが患者たちによい影響を与えたということも事実です。
祈りを捧げる人は人生の満足度が高い
ハーバード大学のチェンとバンダーウィールが5000人以上を対象に行った研究では、8年から14年にわたる追跡調査も踏まえ、最低週1回でも祈りを捧げる人たちは、人生の満足度が高く、ポジティブで性格的に強い面が多く、薬物の使用の可能性が少ないなど、ウェルビーイングの面で、非常によい傾向があったといいます。
テキサス州立大学サンアントニオ校のエリソンらが1500人以上を対象に行った研究でも、信仰心をもって祈りを捧げている人は、心配、恐怖、社会不安、強迫症など、不安障害を経験する割合が低いことがわかっています。
人は、心の拠りどころになるようなものを見つけて、感謝の気もちをもって生きることが大切です。大切な人のことを想って祈ってみる。手を合わせ、心のなかで唱えてみるだけで、きっと大きな変化をもたらしてくれるはずです。
文/堀田秀吾