地上波バラエティとネット配信バラエティの根本的な違い
結果として、平均65点を積み重ねる地上波と、0点を恐れずに100点を狙うネット配信に二極化。しかもネット配信は0点を取っても大きく叩かれず、100点を出したときだけ強烈に注目される。
「日本のバラエティが世界規模?」と疑問を持つ人もいるだろう。確かに『トモダチ100人呼べるかな?』は日本の芸能人を知らなければ楽しめない。しかし、同じフォーマットを各国版に置き換えることで、海外でも成功例を持つ企画を各国に届けられる可能性がある。これにより、ネット配信は世界市場での競争力も高まる。
こうすることで、同じフォーマットかつ、すでにほかの国で大成功している事例をもってして、より改良版を全世界にお届けできる。
さらに企画設計にも大きな違いがある。配信バラエティはSNS拡散や切り抜き映像の利用を前提としており、テレビ的な「前振り→CM→引っ張り」の構成は不要。一気見できるテンポ感を重視し、結果として視聴満足度も高くなる。
ネット上では今回の『トモダチ100人呼べるかな?』に対して多くの称賛の声があがっていた。
「地上波では予算的にも出演者的にも絶対作れないバラエティ」
「期待してなかったけど、日本の配信バラエティで1番面白かった」
「令和の時代に最高のバラエティをありがとう」
もちろん、地上波にも生きる道はある。現状、配信バラエティの多くは地上波的な文脈の延長線上にあり、テレビ文化を知っているからこそ楽しめる部分が大きい。
また、過激なだけがよいわけではなく、65点前後のマイルドな番組を求める層も根強い。スポンサーや放送倫理を通す安心感は視聴者の信頼にもつながっている。
しかしネットバラエティが拡大するにつれ、地上波とネットの棲み分けはより明確になり、地上波はよりマイルドで安全な方向に進むしかないだろう。
特に現在、地上波はスポンサー収益によるモデルが限界を迎え、ドラマのような“お金を生み出せるコンテンツ”に注力せざるを得ない状況にある。映画化や関連商品化が見込めるドラマを制作し、そこで収益を上げることが求められるため、バラエティ番組には十分な力を注ぎにくい。
一方でネット配信は、ドラマでもバラエティでも、新規ファンをどれだけ呼び込めるかが重要で価値は同じ。視聴者に「見たい」と思わせるコンテンツだけを制作すればよく、ジャンルの垣根なく力を入れられる柔軟性を持っている。
もしかすると、バラエティ番組は、ドラマよりも先に地上波からフェードアウトしていくかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部