モデルルームには中国語や英語を理解するスタッフ
各社とも、こうした需要を取りこぼさぬよう、モデルルームには中国語や英語を理解するスタッフを配置するなどして、「爆買い」を積極的に受け入れている。
三菱UFJ信託銀行が3月に公表したレポートによると、千代田区・港区・渋谷区で販売したマンションの外国人取得割合について尋ねたところ、「20%以上」という回答は約7割だった。
こうした状況下、投資目的の海外マネーの流入を止めるという政策は、国民から好意的に受け入れられる可能性がある。そもそも、不動産価格の上昇を抑えるために自国民と外国人で条件を変えるのは世界的に珍しい話ではない。
カナダ政府は23年から外国人の住宅用不動産購入禁止令を導入した。シンガポールでも同年、外国人が不動産を購入する際に支払う「加算印紙税」の比率を60%と、これまでの2倍に引き上げた。
オーストラリアも25年4月、居住者ではない外国人による投資目的の中古物件の購入を2年間にわたり禁止する規制を導入している。いずれも、中国人を念頭に置いたものだ。
参政党や国民民主党が提案している外国人向けの規制は、こうした国々を参考にしているとされる。
財閥系デベ「いくらでも抜け道はある」
ある財閥系デベロッパーの社員は「中国人は法人を通じて物件を購入するケースもあり、法人の代表を日本人にするなど、抜け道はいくらでも作れるのでは」と予想するが、政府が表立って海外からの投資マネーの受け入れを制限するようになれば、その影響は計り知れない。
「日本人ファースト」が不動産に影響を与えるのは、販売面だけではない。「外国人労働者抜きでは、日本の建設現場は成り立たない」と断言するのは、日本を代表する大手ゼネコン会社の社員だ。
建設現場では職人の高齢化が進んでおり、残業規制の強化も加わり人手不足が深刻化している。ゼネコン各社はベトナムやインドネシア、ミャンマーなど外国人人材を建設現場に受け入れることでなんとか仕事を回している状況だ。
出入国在留管理庁によると、人手不足の産業を支援する目的で外国人を受け入れる「特定技能制度」の下で建設業で働いている外国人は24年末の時点で、3万8578人と、前年から2割増、2年前から6割増となっている。建設事業は製造業や介護に続く、外国人受け入れ産業となって久しい。