教師になる気がなくても“揺れた”教育実習の3週間

中高一貫校の母校で、3週間の教育実習に参加したナギサさん(仮名・20代)は、もともと教師になるつもりで教職課程を履修していたわけではなかったそうだが、3週間の現場体験は、予想以上に自身の気持ちを揺さぶるものだったそうだ。

「最初の1〜2週間は授業がうまくいかず、何度も心が折れそうになりました。しかし、指導教官の先生が放課後も遅くまでフィードバックや授業準備に付き合ってくださって、何とか乗り越えることができました」

写真はイメージです(PhotoAC)
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やりがいや楽しさを感じる場面もあった一方、「これは無理かもしれない」と感じた瞬間もあったようだ。

「まだ自分が授業を持つ前に、他の実習生の授業を見学したときのことです。問いかけに対して生徒が全然反応せず、“わかりません”の連続。後ろの席の生徒たちが『答え言えばいいのに』『誰も言わないのウケる』なんて言っていて……。あの場に自分が立っていたら、とても耐えられなかったと思いました」

ちなみに、ナギサさんが実習を受けた年の実習生は、高校に10名、中学校に5名が行ったそうだ。そのうち本気で教師を目指していたのは合わせて7〜8名、実際に教員になったのは5名ほどだったという。

「私の大学で、同学科の友人11人のうち6人が教員志望でしたが、実際に教師になったのは1人だけ。実習後、『限界すぎた』『毎日は無理』『先生たちが怖かった』といった理由であきらめた人が多かったです」

写真はイメージです(PhotoAC)
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授業準備に追われ、家に帰っても深夜までプリント作成。緊張と不安でなかなか眠れない日々。3週間は短いようでいて、心身ともに限界を迎える人がいてもおかしくはない密度だったという。

「受け持ったのはたった1学年、同じような授業の繰り返しのはずなのに、毎日が本当にしんどかった。これを毎日やっている先生たちは本当にすごいと思いました。だから、SNSで見た“1年も続けられない”という声には、当時の私も共感していたと思います」

それでも、教育実習の3週間を「やってよかった」と彼女は振り返る。

「生徒が授業を“楽しかった”と言ってくれたり、ホームルームで自分の話に対してリアクションを返してくれたり……。その瞬間は、今までの苦労が報われた気がして。『ああこれが、先生たちがやりがいを感じる理由なんだ』って、少しだけ理解できた気がしました」