「農業協同組合(JA)などの反発も出てきかねません」との懸念も 

実際、小泉氏の奮闘にもかかわらず、見通しはそう明るくない。

「だから、(現在コメ5キロあたり)4200円のものが落ち着きますか? 本当に。これ(放出する備蓄米)30万トンって、4.6%でしょう。年間消費量が700万トンで」

5月28日の衆院農水委員会で、小泉氏を詰問したのは、日本維新の会の前原誠司共同代表(63)である。

前原誠司氏(本人Xより)
前原誠司氏(本人Xより)

備蓄米の在庫には限りがあり、総需要に占める割合はごく一部。それらを安価で供給できたとしても、果たしてコメの全体価格の引き下げにつながるのかと疑問を呈した。

小泉氏は「備蓄米は古米で、ブランド米と同じ価値ではない」と断ったうえで、「安く買いたいという人たちにも選択肢を増やすことで、高止まりしている平均4200円の価格が落ち着いていく、マーケットの状況をつくりたい」と答弁した。

確かに、小泉氏の言うとおり、消費者にとって安価な選択肢は増える。ただ、それが全体のコメ価格の引き下げにどれだけの効果を持つかは、いまひとつ明確にならない。

国民民主党の玉木雄一郞代表(56)も、「どれぐらい(の価格)に持っていくつもりで取り組んでいるのか」と尋ねた。しかし、小泉氏は、「まずは備蓄米で落ち着かせ、冷静に議論できる環境をつくる」と具体的な金額には踏み込まなかった。

「小泉進次郎大臣と25分間質疑をします。」と、衆議院農林水産委員会前に玉木氏があげたポストにはスケジュール表が(本人Xより)
「小泉進次郎大臣と25分間質疑をします。」と、衆議院農林水産委員会前に玉木氏があげたポストにはスケジュール表が(本人Xより)

いくつもの課題が指摘された農水委員会での論戦。自民の重鎮はこう指摘する。

「政府主導による価格引き下げという意味では、菅義偉政権時代の携帯電話料金引き下げがありました。ただし、あの時は事業者側の事情を丁寧にくみ取っており、消費者側と事業者側の双方が納得できる引き下げ幅の落とし所が、最初からある程度具体的に見えていたのです」

今回は、それが見えてこないのが不安だという。

「大手集荷業者などを排除し、大手小売店に安価な備蓄米を直接供給すれば、価格破壊がおこるだろうというのも、やや楽観的過ぎるように思います。消費者側の視点が先行し、生産者側の視点が弱すぎるのではないか。生産者側への配慮を怠れば、農業協同組合(JA)などの反発も出てきかねません。先行きは極めて不透明です」

「最近こうやって知り合いが日本各地のコメ価格を教えてくれます。2000円台、出てきた」と自身のXで報告する小泉氏(本人Xより)
「最近こうやって知り合いが日本各地のコメ価格を教えてくれます。2000円台、出てきた」と自身のXで報告する小泉氏(本人Xより)
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果たしてコメの価格は、石破総理が語った通り、3000円台まで下がるのか。コメの価格高騰に、手をこまねいてきた石破政権のツケを、緊急登板した小泉氏が背負わされている。

取材・文/河野嘉誠