「適度な距離感」が縁をつなぐ

俺もなんだかんだ言って運はいい方だと思う。

自分で探したわけでもないのにいいミュージシャンにめぐり会えて、その人たちが一緒に仕事をしてくれてるのは運がいい以外の何物でもない。

ただ俺は運を呼び込もうと意識してやってることは特になくて、無理矢理思いつくことがあるとしたら、必要以上に相手の懐に入らないことくらい。でもこれでいい「縁」をもらっているような気はしている。

ミュージシャンの井上陽水さんに会ったときも、多分俺は誰もが知っている大物ミュージシャンに対する態度じゃなかったことで、距離が縮まった気がする。

普通は「昔からファンです」と言うだとか、曲のことをあれこれ聞くとか、妙に持ち上げたりとかするんじゃないかと思うけど、俺は一切しなかった。

というのも実は俺は、陽水さんのことをそんなに知らなかったのだ。会ったときも言われたことに相槌を打つ程度で、俺のそのそっけない態度が陽水さんにとってはむしろよかったのかもしれない。陽水さんは相手に必要以上に持ち上げられたり、いろいろ質問されたりするのがウザいのだろう。

俺は意識してそうしたわけではなかったけれど、相手の陣地に土足で上がったりはしない方だし、自分の陣地にもずかずか入ってほしくない。

もしかしたらこの距離感が、いい縁と運を呼び込んでくれているのかもしれない。

2人はのちにユニット「井上陽水奥田民生」を結成した
2人はのちにユニット「井上陽水奥田民生」を結成した

相手によって態度を変えない

タモリさんがときどき俺を呼んでくれるのも、たぶんラクだからだと思う。

タモリさんともプライベートでたまに飲ませてもらうのだけど、タモリさんの話を聞くときも俺はやっぱり「へー」しか言わない。聞いているんだかいないんだかわからない感じだけど、それでもタモリさんとは音楽の話で盛り上がる。

結局、所さんとも陽水さんともタモリさんとも音楽でつながってるからよくしてくれるところは絶対あるけど、距離感を一定に保っているからいまの関係が保てている。

「笑っていいとも!」の収録が行われていた新宿アルタ前 写真/Shutterstock
「笑っていいとも!」の収録が行われていた新宿アルタ前 写真/Shutterstock
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運って「相手に合わせて態度を変える人」よりも、「誰といても変わらない人」のところに来る気がする。

こんなにすごい人たちと付き合えるということは、俺は相当運がいいんだろうから、俺はこの距離感を今後も多分変えないと思う。

#4 に続く

文/奥田民生

59-60 奥田民生の仕事 友達 遊びと金 健康 メンタル
奥田民生
59-60 奥田民生の 仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル
2024/10/19
1,760円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4478119457

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仕事はどこを目指すべきか? 20代、30代、40代、50代でやるべきことは? 他人の目が気になったら? 親友は必要か? クヨクヨしたらどうするか? 大人の男の酒の飲み方 いくら稼げば幸せか? 人はなぜ生きるのか?

(目次)
第1章 仕事
 仕事なんて「8位」くらいがちょうどいい
 発想に「マーケティング」はいらない
 「運」がいい人がしていること
 20代、30代、40代、50代でやるべきこと

第2章 友達
 「親友」なんていなくていい
 「仕事仲間」は友達か?
 友達関係に「勝ち組」「負け組」を持ち込まない
 「ケンカしたあと仲良くなる」は本当か?

第3章 遊びと金
 ゴルフで自分の「心」を試す
 服は「いいものを少し」がいい
 「ひとりBARデビュー」のすすめ
 人はいくら稼げば幸せか?

第4章 健康
 覚えられないことは忘れていいこと
 奥田民生の食生活
 「酒」は必ず割って飲め

第5章 メンタル
 「体力」より「気力」が大事
 「できたらラッキー」くらいがちょうどいい
 いくつになってもクヨクヨしていい
 民生流「飽き」との付き合い方
 人には運気の波がある
(など)

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