52歳で離婚を決意。一番の原因はセックスレス
2023年にIT業界の市場調査を行うMMD研究所が行なったリサーチによれば、40代のマッチングアプリ利用経験者は33.4%、50代は19.3%、60代は13.1%にのぼるという。
マッチングアプリに詳しいライターの倉田達也氏によれば「若者の間でのアプリの出会いは定番化しているのに対し、中高年向けマッチングアプリは種類や利用者数に伸びしろが見られる」のだそうだ。
「もともと20、30代の男女も多く利用するマッチングアプリを中高年層も利用していましたが、〈30、40、50代からの恋活・婚活〉と銘打ったアプリの登場以降、50、60代男女のためのアプリも増えました。熟年離婚後もトキメキたいとか、人生最後の伴侶探しをしたいなど目的はさまざまなようですが、かなり盛況です」(倉田達也氏)
そんな熟年の恋活や婚活のリアルを調査するため、まず話を聞いたのはアプリ歴約2年で、8人ほどのお付き合いを経て最高のお相手を見つけたという、都内在住の会社員・増田さん(仮名、57歳)だ。
「離婚理由は夫の転職や生活のすれ違いなど色々ありましたが、一番はセックスレスでした。私にとって性的欲求は生活の質を保つ上で欠かせないほど大事な行為でしたが、10年ほど前からそれがなくなり、5年ほど前に話し合いましたが折り合いがつかず、段階を経て昨年離婚しました。
子供が成人するまでなど離婚届を出すまでに数ヶ月間ありましたが、その間は夫公認でマッチングアプリを利用しました。現在、お付き合いしている人は5歳年上ですが、週1は必ずデートをするし性的な相性もぴったりです」
この男性に出会うまではさまざまな“失敗”もしたという。
「待ち合わせ場所に現れない人もいたし、1回お食事した後にその後も関係が続くかと思いきや、音信不通になった方もいました。
一番大きな失敗は、仕事やさまざまなことでストレスがピークになり、ヤケになってワンナイト的なことをした後にクラミジアに感染したことです。もちろん相手男性にうつされましたが、アプリ上でしか連絡先を知らず、ちゃんとした連絡をとりようがありませんでした。あれは自分の戒めにもなりました」
現在のお相手は昨年末に出会い、程よい距離感で交際中。「GW連休中も11日間のうち5日間はデートした」そうだが、悩みもあるという。
「ゴルフや登山に行ったり、毎日楽しいです。でも、私はできれば内縁関係になり、ゆくゆくは共に暮らせたらと思っていたけど、彼はそうじゃないみたい。
うちには子供がまだいるからお招きするのは、はばかられるとしても、彼はひとり暮らし。一度も“家においでよ”とは言われない。なんとなく線引きされている気がして踏み込めない」
決定的だったのは今年1月に受けた人間ドックで見つかった心疾患で、医師より経過観察との診断を受けた時のことだ。
「彼からは“君の決断を尊重するよ”と言われました。本当はもう少しだけ私の身を心配した上で今後の付き合いや暮らしのあり方など、一歩進んだ話がしたかった。でもその話が出なかったということは、互いに健康で迷惑をかけない間の付き合いで留めようと言われた気がして、寂しさを感じました」
ラストの恋のお相手を見つけたとしても、熟年離婚後の関係構築の方向性が同じとは限らない。
「寂しさを感じる」と言いながらも「今日もこの取材の後、その彼とカフェデートします」と軽やかな足取りで、増田さんは彼の元へ向かっていった。