フジテレビが会見で欠けていた姿勢とは

会見中には中居氏と被害女性の認識が「一致か、不一致か」と記者が執拗に質問を続け、会場に居合わせた他の記者から「それは被害者への二次加害になる」と諫められるシーンもあった。

「密室での出来事は警察が捜査する案件ですので、そこは回答できないと思います。大切なのは当事者2人の問題と会社の問題をきっちり分けること。

本来、会社が調査するところは社員の関与です。どういう人間関係の中でその場が設定され、女性に対し圧迫感を与えるような優越的な地位の乱用があったのか否か。そこは会社として調査が出来ることなので回答すべきでした。しかし、初動から専門家を入れた調査チームを発足することもせず、現状LINEをチェックしただけで、女性へのヒアリングはできていない。それは調査とは言えません」

改めて、石川さんがフジテレビの広報コンサルタントに入るとしたら、今回の会見をどのように修正するか、ポイントを聞いてみた。

「まず一番は『経営陣の総退陣の表明』をキーメッセージにします。それができていたら、信頼回復の第一歩になっていたでしょう。今回は責任の取り方が中途半端で、ガバナンスの変革には至っていません。社長交代も“逃げ”の印象が否めないので、実際の辞任のタイミングは事態が収まるころにするべきでした。

あとは、クライスコミュニケーションにおいて最も重要な点は、失敗の本質に対し、正直に向き合う姿勢です。判断を誤ってしまうことは人間誰しもあることです。今回の場合では『被害者のことを十分に考えることができなかった』、『企業利益を優先してしまった』と正直に言えばよかった。

『被害女性のプライバシーを優先する』という言い方より、むしろ『自分が判断を誤ったのは確かですが、どこでどう誤ったのか実は分からないんです』と正直に言ったほうがマシだったケースもあります。

不祥事が起こった際、会見の形やその有無が、どれほど企業に大きな経営危機をもたらすのかという意味では、語り継がれる会見になったのではないでしょうか」

10時間以上にわたり“CMなし”で地上波放送するという前代未聞の記者会見をしたフジテレビ。同社がこれからどう再生していくのか。新体制下での舵取りが注目される。

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部

10時間を超える記者会見で短い休憩が一度だけという異例の会見だった
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10時間23分にも及んだ異例の会見だった
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