「お客様のおかけになった電話番号は…」
動画には、ドラッグストアのレジの前にこの製品の広告チラシが置かれている場面や、東京メトロ渋谷駅のそばの屋外大型スクリーンに広告が出ている場面もある。いずれも実際にはあり得ない光景で、フェイク処理を施されているもようだ。
関節の痛みに効くと宣伝されている「かんせ」のパッケージの下部には「固形茶」との表示もあり、もはや何の製品なのかよくわからない。
そこで、YouTube広告に映るパッケージの裏面やホームページの記載を基に、この製品はいったいどういうもので、なぜ日本のドラッグストアで売られているかのような映像があるのか、直接質すことにした。
ところが販売をしているというM社は、釜山のリゾート地と表示されている本社の電話番号を公開していない。販売部門とみられる「顧客相談室」はソウルの金融街に所在しているとの記載があるが、そこに電話をかけると「おかけになった電話は、お客様の事情によりおつなぎできません」との韓国語の案内が流れる。
M社は「マーケティング問い合わせ」受付などとしてメールアドレスをホームページに載せているものの、摂取する製品についての電話では連絡がとれなくなっているのだ。
さらにパッケージには「製造元」として韓国南西部、全羅北道益山市のB社の名がある。もはや「日本の薬」とも言えない状態だ。このB社が公開している電話番号にかけると、今度は「この番号は現在使われておりません」との案内が流れる。
韓国最大の検索サイト「NAVER」で、ハングルで「かんせつ」と打ち込むと、この製品ホームページより先に一番上に現れるのは、「ナム(木)ウィキ」と呼ばれる“韓国版ウィキ”の「かんせつ関節薬詐欺広告事件」というページだ。
韓国に暮らすメディア関係者が話す。
「このナムウィキの記述によると、『かんせ』のネット広告は2024年4月から現れ、今年に入ってXで騒がれると、ホームぺージで日本語パッケージの製品写真が韓国語パッケージのものに差し替えられた、となっています。
さらにこのM社は、以前も『ヨーロッパの薬局で在庫がないほどよく売れているダイエット薬』とする製品を扱い、イタリアの薬局でその製品が販売されているような動画広告を流していたが、全部ウソだった、との指摘もナムウィキでなされています。今回と同じ手法のインチキ広告を以前から繰り返している疑いがあります」
悪質な偽広告の舞台にスギ薬局が使われたことについてスギホールディングスの担当者は、「YouTubeやインスタの広告で出ていた動画なので、運営会社に動画を取り下げるよう求めています。抗議という形です」と話している。
健康被害も憂慮されるインチキ薬が“日本ブランド”を信じた人に買われていたとなれば恐ろしい。発覚した以上、韓国の保健当局は厳しく対処してほしいものである。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班