尹氏が内乱罪で立件される可能性がある
可決の知らせはリアルタイムで伝えられ、国会の内外で歓声があがった。
「国会周辺で警官隊とにらみ合い『戒厳撤廃』『独裁打倒』とシュプレヒコールをあげていた市民らはこの時から『大統領を逮捕せよ』と叫び始めました。
重武装の軍特殊部隊は国会から出てバスに乗り込み、しばらく近所で待機していたため緊張が続きましたが、やがてバスも国会を離れました。軍部隊は国会に突入しましたが発砲せず、暴力的な鎮圧も試みませんでした。将兵も、こんな計画がうまくいくわけないと、やる気がなかった可能性があります」(韓国紙記者)
結局尹大統領は可決の通告を受け、憲法に基づき4日午前4時半に閣議を開き戒厳令を解除、野望はついえた。だが、これで終わるわけがない。
韓国憲法は『戦時・事変又はこれに準ずる国家非常事態』が起きた場合に限り大統領が戒厳令を出せると定めていますが、今回は尹氏が延命のために行なったことは明白です。このため政権維持はこれ以上は難しいでしょう。すでに大統領府の秘書室長ら高官がまとまって辞意を表明しました。
国会の議席数を見れば与党から8人が賛成に回れば大統領の弾劾訴追が成立します。野党は既に弾劾訴追案の提出準備に入り、4日中に動きがありそうです。
ただ、弾劾訴追案を審理する憲法裁判所の裁判官が与野党対立のあおりで充足数を満たしておらず、弾劾の前に与野党がこの問題を決着させる必要があります」(韓国紙デスク)
そしてその先には刑事罰が尹氏を待っているとの見方が強まっている。
「韓国刑法は国土を奪ったり国権を乱したりする目的で暴動を起こした者は最高で死刑に処すという『内乱罪』を定めています。韓国は死刑を事実上廃止しているので最高刑は無期懲役ですが、尹氏が内乱罪で立件される可能性はあります」(同上)
政権運営失敗のツケを暴力的な権力奪取でチャラにしようとした試み。日本に最も近い隣国が独裁化の危機を免れたことは幸いとしか言いようがない。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班