神の手と5人抜き
今日でディエゴ・アルマンド・マラドーナが天に召されて4年となる。2020年11月25日、60歳というあまりの早逝に、世界は悲しみに包まれた。
マラドーナといえば、1986年メキシコ・ワールドカップが思い出される。永遠に語り継がれるであろう “神の手”だ。
準々決勝のイングランド戦、ファジーなパスにいち早く反応したマラドーナは、左手でボールのコースを変えた。
VAR(ビデオアシスタントレフェリー:試合中にビデオで判定を確認する)がある現代であればゴールは認められず、マラドーナにはイエロカードが提示されたに違いない。
当時のアルゼンチン代表チームメイト、セルヒオ・バティスタも後に、
「ディエゴがハンドだ、ハンドだってせせら笑いながら、俺をハグしろ、喜べ、口を閉じていろと言っていた」と証言している。
ちなみにこの試合ではハーフウェー付近から一気にドリブル、絶妙な緩急でイングランドの選手たちを次々にかわし、最後はワンフェイクでシルトンを崩しゴールを決めた、いわゆる “5人抜き” の伝説も打ち立てている。
準決勝でベルギーを、決勝では西ドイツ(現ドイツ)を退け、25歳のときに世界の頂点に立った。
ワールドカップ優勝により、世界的な名声を手にしたマラドーナ。彼は2年前の1984年に当時最高峰のリーグであったイタリア・セリエAのナポリにバルセロナから移籍している。
首都ローマからおよそ200キロほど南に位置し、優勝争いとは無縁の日々が長く続いていたナポリに、マラドーナは初のリーグタイトル(86/87シーズン)をもたらすだけでなく、88/89シーズンにはUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)でも優勝するなど、タイトルをもたらした。
結果的にナポリ市民はマラドーナをカルト的に愛し、 “現人神” と崇めるようになっていく。
だがワールドカップ優勝、セリエAでのタイトル獲得という栄光の中で、彼は徐々にストレスに蝕まれていった。連日のようにメディアが追いまわし、プライベートが壊れていったのだ。