女子プロレスラーたちの曲の特徴
りぼん氏は「永遠の16歳」を自称する平成世代。もちろん1980年代の全日本女子プロレスブームはリアルで体験していない。
そんなりぼん氏は約6年前からアナログレコードの魅力に取りつかれ、全国のレコード店で“中古レコード漁り”をするように。
現在では自宅に数千枚、レコードを保有しているという。気になる作曲家、編曲家が携わった楽曲をたどっていくうちに、それだけの枚数までふくらんだそうだ。
女子プロレスラーのレコードを集めるようになった理由も、もともと女子プロレスに興味があったわけではなく、やはり作曲家、編曲家がきっかけだったという。
初めてゲットした女子プロレスラーの中古レコードは、コンピレーションアルバム『リングの女神達〜女子プロスーパースター列伝〜』。
そこに収録されているミミ萩原の曲『セクシーパンサー』に惚れ込み、女子プロレスラーのレコードを探すようになった。
りぼん氏は女子プロレスラーの中古レコード事情をこう明かす。
「ビューティ・ペア、クラッシュ・ギャルズ、マッハ文朱、JBエンジェルス(ジャンピング・ボム・エンジェルス)、ミミ萩原、風間ルミ、デビル雅美……。
手に入る限りのアルバム、シングルを集めました。中には、歌ではなく試合後のインタビューが入っている変わったレコードもあったりして。ただ、悪役レスラー系のレコードは高額なものが多いので、なかなか手が出せないんです」
それにしても、女子プロレスラーたちはどんな内容の曲を歌っていたのだろうか。
「たとえばクラッシュ・ギャルズはフレッシュでパワフルな楽曲が多いです。だけど長与さんのソロ曲は、めちゃくちゃ乙女チック。
男性とデートするとき、『一緒に車に乗ると緊張して私は何も話せなくなるから、私は別でバイクに乗って行くね』という風なものとか。
男性はクーペに乗って、長与さんはバイクで移動して。だけど途中で寄り道して一緒に夕陽を見たりするところなんかに、恋愛感情の繊細さが伝わってきます。
これは女子プロレスラーのみなさんの多くの曲に言えることなのですが、リングの上ではたくましいけど、マイクを握ると途端に乙女になる。そのギャップがたまらないんですよね」
と、りぼん氏は分析をまじえながら、それらの楽曲の魅力を語ってくれた。
ちなみに、女子プロレスラーの曲は当時ヒットしたものや「良曲」とされているものであっても、後にCD化やサブスク配信されているのはごく一部。
そのため各レスラーのアルバムやシングルを全作集めようとすると、必然的に中古レコードに手を出すことになるのだという。
また当時は女子プロレスラーだけではなく、野球選手、力士らさまざまなスポーツ選手もレコードをリリースし、ヒットを飛ばすことがあった。
「私も、フィギュアスケート選手だった佐野稔さんのレコードを持っています。博多のレコード屋さんで見つけました。佐野選手を存じていたわけではなく、ジャケットを気に入って買いました」
と購入当時のことをりぼん氏は振り返る。
りぼん氏いわく「アイドルの曲のような感覚で聴くことができる」という、女子プロレスラーの楽曲。「極悪女王」の影響で昭和の女子プロの破天荒エピソードなどがクローズアップされているが、そのムーブメントは音楽面にまで波及するかもしれない。
取材・文/田辺ユウキ