「どうせダメだろうな」って諦める
サク そう、そのあたりのことを話したい。ちょっと子どもの頃の話をしていいかな。
わたしは「みんなはしていいけどあなたはダメ」と言われながら育ったのよ。どういうことかというと、たとえば、わたしは三姉妹の真ん中なんだけど、姉と妹は次の日学校が休みの土曜の夜は遅くまで起きていてよくて、みんなで深夜の番組を見ようっていう楽しみがあった。
だけどわたしだけはなぜか夜8時すぎには寝なきゃいけなかったの。
スー え? サクちゃんだけ? なぜ?
サク 親も、意地悪しようとか、わかりやすい悪意はなくて、この子はテンションが上がるとうるさいからって、そういう理由。たしかにわたしは調子に乗りやすかったから親の配慮もわからなくはない。
けど、そういう小さな扱いの違いが重なって、他の人はしていいけど「わたしはダメ」が家の中では当たり前になったのよ。そうすると、がっかりしないようにあらかじめ「どうせダメだろうな」って諦めるのがクセになるんだよね。
スー そりゃキツいよね。幼少期に「あなたはダメ」と言われて育つと、大人になって誰ももうダメなんて言ってないのに「これ欲しい」「あれしたい」が素直に言えない人になっちゃうってサクちゃん言ってたね。
サク そうなの。「わたしはダメ」っていう設定をとっくに外していいのに、大きくなってからも、諦め癖が残っちゃった。諦めるのが最善、なぜなら願っても無理だから。そういう思考がしっかり身についてしまったのよね。それを続けていたら、気づくと、手持ちのカードがあれもないこれもないって本当に何もなくなってた。
スー 手持ちのカードって?
サク あれをやってみたらどうだろう? こっちはどうかな?っていう可能性だよね。わたしの場合、そうした可能性が自分にあるということ自体、知らなくて。知らないっていうか、可能性があると信じられないっていう感じかな。実際に目に見えているものだけで「これしかないから仕方がない」みたいな感じでやってた。
スー 私は目の前に10個の扉があったら、開けたい扉からどんどん次々開けていくタイプ。サクちゃんは?
サク わたしは1個選んだら、他の扉は消滅するって思うタイプだった。だからその1個もなかなか選べなかった。
スー え? それってどういうこと?
サク そもそも自分に対して幾つもの扉が用意されていると思えなかったんだよね。
選ぶという感覚がない。しょうがないから「この扉」でいくしかない、みたいな、そういう感覚。