日本食ブランドを損ねる日本人

日本の和牛は世界的に高く評価されている。世界最高峰のステーキを決める国際品評会「ワールド・ステーキ・チャレンジ2022」では、日本の和牛が見事に三冠を獲得した※1。

いまや海外のVIPたちもすっかり和牛の虜だ。私が手がける会員制和牛レストラン「WAGYUMAFIA」には、デビッド・ベッカム、エド・シーラン、ビヨンセ&ジェイ・Z夫妻も訪れてくれた。

デビッド・ベッカム氏
デビッド・ベッカム氏
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しかしそんな世界に誇る和牛のブランド価値を、あろうことか日本人みずからが傷つけている。2022年12月、モスバーガーが「一頭買い黒毛和牛バーガー」という名の商品を数量限定で販売した。

日本で飼育されている和牛の9割以上が黒毛和牛(黒毛和種)だ※2。黒毛和牛は脂肪の質が良く、肉もとても柔らかい。言うまでもなく高級品である。モスバーガーのその黒毛和牛バーガーには、サーロインやヒレといった上質部位も使用されているのだという。

聞くところによると大人気らしい。そこで私も実際に食べてみた。思わずうなった。黒毛和牛ならではの濃厚な旨味が口のなかにあふれる。看板に偽りなしだ。美味い。でももうひとつ、うなった点がある。こちらは落胆のうなりだ。なんと値段が税込690円。愕然とせざるを得なかった。これで690円はあまりに安すぎる。まさに価格破壊である。