「気にしすぎ人見知り」は想像上の他者に起こる

新学期になり、新しい顔ぶれと接する機会の多くなった学生がこんなことを言っていました。「初対面の人となら気安く話せるけれど、顔見知り程度の知人や、友人の友人とかと話すのは緊張するのでストレスです」。

本来、人見知りとは、初対面のようによく知らないような人に対して起こるものですが、どうもここでの人見知りは違うようです。よくよく聞いてみると、おたがいにまったく知らないわけではない、ちょっと知っているような間柄だと、あれこれ想像してしまえるので、話しながら気になってしまう、とのこと。

たしかに、初対面のようになんの情報もなければ、目の前に実在する他者とだけ向かい合えばいいわけですが、少しでも知っているばあいは、少ない情報から勝手にあれこれ考えてしまうことが可能です。

ですから、「あの時のことはどう思っているのかな」「友人から私のことをどのように聞いているのかな」など、目の前に実在する他者に、自分のなかのイマジナリーな他者を重ね合わせてしまいがちです。

「顔見知り程度の知人たちとうまく話せない」「大勢の前で発表するのが苦手」「話している時に会話が途切れたら気まずい」など、そういうことをふだんから気にしている人もいるでしょう。

写真はイメージです
写真はイメージです

そのような心理状態について、ゼミ生の相馬優香さんと、大学生を対象に研究をおこないました。

状況別対人不安(発表・発言への不安/親しくはない相手への不安/異性への不安/会話のないことへの不安/目上の人への不安)と、他者意識(内的他者意識/外的他者意識/空想的他者意識)に関する質問紙調査をしました。

それらの関係を検討したところ、「会話のないことへの不安」と「目上の人への不安」では、「内的他者意識」「外的他者意識」「空想的他者意識」のすべてに有意な相関がありました。

「異性への不安」と有意な相関が見られたのは「内的他者意識」のみでした。「発表・発言への不安」と「親しくはない相手への不安」では、「空想的他者意識」にだけ強い相関が見られました。

この結果から、発表や発言することへの不安、それほど親しくはない相手への不安、会話の途切れや目上の人などへの不安が高い人は、自分のなかで他者のことをあれこれ想像する傾向が強いことがわかります。