逆転を狙った麻生氏の「一手」
結局はキングメーカーの座を争う“派閥ボス”たちの意向がモノを言う総裁選だった。
9月27日に行われた自民総裁選は石破茂元幹事長が当選した。
石破氏は1回目投票で、181票を集めてトップになった高市早苗経済安全保障相に次ぐ2位(154票)に甘んじたものの、決選投票では議員票を143票も積み増して高市氏に逆転勝利、第102代総理大臣に就くことが確定的となった。
この逆転劇の背景には、水面下での派閥ボスらによるめまぐるしい攻防戦があった。まずは唯一、派閥を維持している麻生派の麻生太郎副総裁。
麻生氏の狙いは次期首相を自らの手で誕生させ、総裁選後も自民党内で主流派の地位に留まり、影響力を維持すること。
「ただ、麻生派として推していた河野太郎デジタル相、上川陽子外相ともに支持が増えず、決選投票に残れない見込みとなった。
一方でキングメーカー争いをする菅義偉元首相は関係のよい石破氏、小泉進一郎元環境相が決選投票に駒を進める可能性が大で、どちらが当選してもいい左うちわ状態。
このままでは手駒切れの麻生氏は非主流派に転落するだけでなく、84歳という年齢を考えれば、政界引退も迫られかねない崖っぷち状態にありました」(全国紙政治部デスク)
そこで打ち出したのが河野、上川支持を見合わせ、1回目の投票から麻生派として決選投票に残りそうな高市氏に票を集めて、チーム菅に対抗するという作戦だった。
「麻生氏が高市支持に回り、茂木派にも同調を呼びかけたという情報が自民党内に飛び交ったのは総裁選2日前の9月25日夜半のこと。
総裁選当日、1回目投票で直前まで議員票は35票ほどと目されていた高市氏が72票も集めて総裁選会場がどよめきましたが、この異様な票の積み増しは麻生派、茂木派、さらには勝ち馬に乗ろうとする約45票の浮動票からの得票があったから。
実際、54人もいる麻生派が推す河野氏の得票は22票にすぎなかった。麻生氏の呼びかけを受け、かなりの麻生グループ票が高市氏へと流れたと考えるべきでしょう」(前同)
ただし、結果は石破陣営の大逆転。当選のあいさつをする石破氏を見つめる麻生氏が苦虫を嚙み潰したような表情だったことは言うまでもない。