中国からのインバウンドは戻る?

もともと中国は膨大な人口を抱えている。農村部でも経済力が高まり、海外旅行に行けるだけの中間層が増加すれば、さらにインバウンドは劇的に増えることが予測されていた。

しかし、不動産バブルの崩壊などによる経済不振やそれに伴う若者の就職難などに加え、人口減少が始まっている現状からは、再び訪日客が増加するという楽観的な予想は立てにくい。勤務先の大学に大勢来ている留学生に聞いても、中国での就職は極めて難しいとか、給与が下がり続けているといった悲観的な話が多い。

訪日外国人観光客のイメージ 写真/shutterstock
訪日外国人観光客のイメージ 写真/shutterstock

他方、東南アジア諸国、具体的にはタイやマレーシア、シンガポールでは、中国人の短期滞在者に対してビザ免除を行ったため、そちらに中国からの観光客が流れたとも考えられる。中国の旅行会社は、日本渡航の伸び悩みとして福島第一原発の処理水の海洋放出や能登半島地震などの影響も指摘している。

他の国からの訪日客増加が見込めれば、中国に頼らなくてもインバウンドはさらに伸びるとも考えられる。だが、いずれにせよ、これまでインバウンドを支えた国(2019年では30%を占める)の動向は、観光立国の成否を大きく左右する。中国の経済低迷は、デフレの進行や消費性向の低下にもつながり、海外渡航にお金を使う状況には簡単に戻れない恐れもある。

とはいえ、2024年に入ると、中国からの訪日客はかなり回復しており、上半期(1~6月)には台湾を上回るまでに伸びている。政治・経済両面の影響を受けやすい国だけに距離感がつかみづらい状態が続きそうだ。

「円安」日本旅行を満喫している外国人訪日客へのインタビューをテレビ番組などで見ていると、きっかけはアニメだったり、自国で食べた寿司やラーメンなどの日本食だったりする。そして、「本場」の日本食の洗礼を受けて感激する。あるいは、24時間営業で品数豊富なコンビニエンスストアやバラエティ豊かな自動販売機、正確かつ快適な新幹線などの虜(とりこ)になる。

こうした様子を見るのは、日本人としても誇らしい気持ちになる。しかし、その陰にはもう少しシビアな面もある。それはいうまでもなく「円安」の影響である。