教団系企業は学習塾や英会話塾、病院も経営

――かつてアメリカはフレイザー委員会を下院に設置し、アメリカ政界への工作活動を強める旧統一教会の実態を徹底調査し、その闇を白日の下に明らかにしました。日本の国会にも国政調査権が与えられていますが、なぜ、日本ではフレイザー委員会のような綿密な調査が実現しないのでしょう?

1976年にフレイザー委員会は教団の実態を知る日本人に聴取をしたいと日本政府に協力を求めています。しかし、日本政府はこの聴取を阻みました。聴取対象をアメリカ人に限定することを委員会スタッフへのビザ発給条件としたため、実現しなかったのです。

日本人信者が世界最多で、過剰な献金など、教団による被害が甚大なのに、日本政府がフレイザー委員会への協力を拒んだのはあまりに不可解です。非協力の背景に日本の保守政治家と教団の何らかの深い関係があったとのではと勘ぐられても仕方ありません。

同じように今回も日本の政界に保守政治家を中心に旧統一教会の闇を徹底調査しようという機運は乏しい。

今の国会は自民が過半数を占め、教団と何らかの接点を持つ国会議員は自己申告が中心の党内調査でも179人を数えます。米フレイザー委員会のように旧統一教会の闇を国会が徹底調査するのは、政権交代が起きないかぎり難しいでしょう。

教団内には内部分裂の動きも…旧統一教会「文ファミリー外し」の現実味〈有田芳生〉_2

――フレイザー委員会は宗教にとどまらず、教育、文化、政治、収益事業なども行う教団を「文鮮明機関(Moon Organization)」と規定しました。この収益事業を糸口に、アメリカは教団の不正を追及し、1984年には文鮮明氏を脱税で1年半の実刑・収監に追い込んでいます。

やる気さえあれば、同様の手法は日本でも有効でしょう。教団系企業としては霊感商法で知られる「ハッピーワールド」や「一信ジャパン(旧一信石材)」、軽トラックで鮮魚を移動販売する「一心天助」などが有名でしたが、他にも学習塾や英会話塾、病院など、かつてもいまも多彩なビジネスを営んでいます。

スーパーやコンビニで見かけるウコン飲料を2020年まで製造していた「コスモフーズ」(旧社名日本メッコール)もそのひとつです。この教団系企業は年商が59億円(2020年度)もありながら、純利益はたった1900万円しか計上されていません。ちょっと不自然な数字で、経理上のからくりがあるようにも見えます。

もし、そこに不正な経理や脱税行為があるとしたら、税法違反などで教団関連企業の不正を問える。これなら刑法上の違法行為を摘発するだけで、教団を圧迫して日本国憲法が定める信教の自由を侵害することにはなりません。