東村山施設の実態「慢性的な職員不足」

実は介護事業者の細かな情報は、各都道府県のホームページなどから、ある程度実態を知ることができる。都道府県のHPから「介護事業所検索」をかけると、事業所の概要が記載されているのだ。この施設の記載内容を見た元介護職の男性はこう解説する。

「問題となった東村山の事業所に所属するケアマネは、93%の利用者に対して自社の訪問介護サービスを受けさせており、これは異常なほど高い数字ですね。つまり、組織ぐるみでケアマネが利用者の〝囲い込み〟を行っていたということがわかります」

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さらに、ある程度大きな規模の施設ではサービス提供責任者(サ責)が数名配置されるのが標準的だ。サ責とは、介護サービスの調整役のこと。例えば、ケアマネが決めたケアプランに基づいて訪問介護計画を作成したり、利用申込みの調整、利用者の状態変化やサービスへの意向の定期的な把握などが主な職務だ。介護福祉士や、実務者研修修了者、旧介護職員基礎研究修了者など、一定の有資格者がサ責となり、訪問介護員等のうち利用者40人に対して1人以上配置しなければならないなどの決まりがある。

東村山の施設の例でいえば2021年度、4名ものサ責が退職したことが都のHPからわかる。短期間でサ責が入れ替わるのは、組織に何らかの問題があると推測できるという。

「東村山の施設について都のHPを見ると、そもそも78人の利用者に対して、常勤の介護職が11人となっています。その全員が『専従』ではなく、事業所内で他の職種にも就いている『兼務』と記されており、実態は職員が不足しているのでしょう。前年度に訪問介護職員を8人採用し、同じ年度に8人が退職していることからも、適正な運営だったとは思えない」(同前)

実際のところどうなのか。東村山の施設を運営している事業者に詳しい話を聞こうと電話をかけてみたが、電話口の職員は「担当者が不在」だといい、帰社時間も「わからない」と答えた。改めて文書で質問状を送ったが、回答はなかった。

バレていないだけで、被害を受けた高齢者はもっとたくさんいるかもしれない─。報道を見て、私はそう思った。また、3か月の利用者受け入れ停止だけという処分内容も、甘いのではないかと感じていた。