「暴れられる選手が、チームには必要なんだよ」

大久保は練習であっても、「パスを出せ」と要求し続けた。理不尽なタイミングもあったはずで、周りには不満を感じた味方もいただろう。いわんや、敵に対してはなりふり構わなかった。イエローカードはJ1歴代最多の104枚。たとえ「乱暴者」のレッテルを貼られても文句は言えまい。しかしJ1通算最多の191ゴールを叩き出すためには、その気性が必要だった。

「暴れられる選手が、チームには必要なんだよ」

日韓ワールドカップなどでも活躍した松田直樹が、生前に言っていたことがある。彼自身、猛々しさを隠さない選手で、自分と似て感情量が豊富な大久保、乾貴士、小野裕二のような選手をかわいがった。決して優等生ではない。しかし人間的に可愛げがあって、戦う気持ちを一方向に出せたら、凄まじい力を発揮できるはずだと――。

鈴木が上に行くか、それはわからない。ありあまる気迫に自身が飲み込まれる可能性もある。Mala Lecheは毒にもなるだろう。しかし、その覇気は精度の高いプレーを続けるために欠かせないもので、制御するべき時はあっても、一つの魅力的なキャラクターだ。

今シーズン、鈴木は、(東京戦まで)Jリーグ16試合すべてに先発出場。首位争いする鹿島で、欠かせないストライカーになっている。

W杯日本代表に選ばれる可能性は低い。しかし、ゼロではないだろう。2018年11月に怪我で辞退して以来、招集は遠ざかっているが、修羅場において異色な存在になる。

7月に行われるE1選手権は国内組で戦うだけに招集はあるか?

文/小宮良之 写真/Getty Images