主将プジョルの忘れられない一言

FCバルセロナが最強を誇った時代、カメルーン代表FWサミュエル・エトーは我が強く、気性も著しく激しかった。ジョゼップ・グアルディオラ監督からは当初、戦力外通告を受けていたほどである。全身全霊で戦う精神は持っているのだが、感情の起伏が激しく、敵意が燃えると手が付けられず、周りと安定した関係を保つことが不得意だったと言われる。

「自分を”我が強い人間だな”と思うことはある。考えていることは何でも言っちまうし。でも、その気の強さが自分を後押しし、苦境でも助けてくれた。俺はチームが悪い時こそ、アグレッシブに敵に立ち向かう」

バルサ時代にインタビューした時、エトーは不敵な顔で語っていた。エトーが発した覇気は、バルサに勢いを与えた。宿敵レアル・マドリード戦では、復讐心すら滲み出るプレーで勝利の立役者になった。猛然とした戦いが、チームメイトにも伝播した。

「サミュエル(エトー)のMala Lecheは、パワーダウンしかけたチームに力を与えた。みんな、どこかで仲良し集団になってしまうところがある。彼のおかげで、緊張感を持って戦うことができたんだ」

当時、バルサのキャプテンだったカルラス・プジョルが洩らしていた言葉が忘れられない。エトーはチーム内で周りの空気を読まず、ゴールにつながるパスを強く要求し、それは感じが悪いほどだった。一方で、ピッチに立てば先頭でボールを追い、その闘争心が集団の停滞を打破した。

かつてJリーグ3年連続得点王に輝いた大久保嘉人も、タイプ的にはエトーと同じだった。