俺が『ちいかわ』の存在を知ったのは、いまから半年ほど前になろうか。当時、始めたばかりのLINEに同僚の女性スタッフが、妙に簡素に描かれたネコやコグマ、ウサギのスタンプを送りつけてきたことに端を発する。

そのころは恥ずかしながらちいかわなんてものは知らないから、

「なあなあ。この……『お寿司!』って言った瞬間に転がって『ザザァァァァ……!』ってひっくり返しちゃうスタンプ……なんなの?? かわいそうなんだけど……」

男50歳にして“ちいかわ”にハマる! 30年ぶりに思い出した「かわいい~!」の快感とは?_b
これがそのLINEスタンプだ

ちょっとブルーになって、そんな質問をぶつけていた。すると女性スタッフは、

「“ちいかわ”って言うねん。ナガノって人がTwitterでマンガを連載しているんだけど……それが妙におもしろかわいくて、いまちょっとハマってるんだよね」
このように回答……。

これが、50歳のおっさんが「ちいかわ」という名前を初めて知った瞬間なのだが、そのころは前述の“女子=かわいいのハードルが低くて飽きやすい”と思っていたので、このちいかわとやらについてもすぐにブームが去ると確信していた。

しかしその後も……来るわ来るわ、ちいかわのスタンプが!!
さらにしばらくすると、
「今日の『ちいかわ』マンガ、めっちゃよかった!! キミも読んでや!!」
と、ナガノさんのTwitterに誘導するメッセージまでも……。最初は、「めんどくせ」と思って「ハイハイ」と空返事をするだけで済ましていたんだけど、ホントに毎日……というか、30分に1回くらいは『ちいかわ』のスタンプが送られてきたため、ついに俺は根負けしてしまうのだ。

そして、
「仕方ない。1話だけ読んでみるか」
ブツブツと念仏を唱えながら、件のナガノさんのTwitterに行ってみたんだけど……!!
その5秒後に、俺は先のスタッフに以下のようなLINEを送っていたのである。
「ちちち、ちいかわ、かわいぃぃぃぃいいいい!!!>< なんだコレ!!! 30年ぶりくらいに“トキメキ”ってもんを思い出しちゃったんですがッ!!!!」
おじさんの“かわいいハードル”が下がった……いや、この世から消滅した瞬間であった。

そして、その後の俺の生活は、まさに“ちいかわ起点”のものとなる。
朝起きて最初にやることはTwitterを起動し、ナガノさんがマンガを更新しているかどうか確認すること。だいたい、2日に1回くらいのペースで更新されているんだけど、それがなかったときはつねに枕元に置いてある単行本『ちいかわ』(3巻まで発売中)を手に取り、テキトーなページを開いて読み返す。これで心がちいかわで満たされたら、金曜日だったらすぐにテレビを付けてチャンネルをフジテレビに。だいたい午前7時40分あたりから『めざましテレビ』でアニメを放映しているので、欠かさずそれを見なければいけないのだ。

わずか数分のアニメを視聴し、
「あ~~~^^ 今日もかわいかった^^」

黄色い声で短い感想を漏らしたのも束の間、すぐに『ちいかわ』アニメの公式Twitterでいま見たばかりのアニメが見逃し配信されているので、それを……だいたい5回くらいくり返し見る。

これにより、心の『ちいかわ』充填度がMAXを振り切るので、ようやくここで、
「今日も元気になった! さあ仕事すっかな!!」
このようなモードになるのである。
ちなみに、アニメが更新されない金曜日以外の日は、先の見逃し配信を何十回となくくり返し視聴して飢餓状態を凌いでいるので、どうかご安心していただきたい。