大切なのは、我慢と余裕の絶妙なバランス
30歳を迎える今では、世間が決めた「幸せ」の枠から少しずつ自由になれた気もします。また、ムダに悩むことも減りました。こういった内面の変化が生まれたのも、年齢や経験を重ねたことに加えて、Mリーガーになって「余裕」が生まれたのも大きな理由に思えます。
ひとつは、心の余裕です。
麻雀と出合う前は、タレントとして「いつ番組に呼ばれなくなるか、わからない」「仕事がなくなったらどうしよう」といった漠然とした焦燥感がありました。麻雀プロになったばかりの頃は、当然ながら実績もなければ、自分のポジションも確立していなかったこともあり、漠然とした不安を常に抱いていました。
しかしMリーガーになってからは、たくさんの方の声援をリアルに感じられるようになり、サクラナイツの一員としても、自分の課題や立ち位置が明確になったことで、心の余裕が生まれました。
次に経済的な余裕ができたことも、内面に大きく影響したと思います。「貧すれば鈍する」という言葉があるように、どんな人でも物質的な余裕がなくなると、心の余裕がなくなるものです。
ラッキーなことに私の場合、「貧する」ことはなかったものの、モデル時代には、私服を紹介する企画ページや番組収録のために自前の衣装を用意することも多く、貯金をする余裕はほとんどありませんでした。撮影用の衣装は、プライベートで着るには、少し派手過ぎるので二束三文で手放したこともあります。
麻雀の世界では、たとえ「プロ」といっても、麻雀だけで生活していくのは厳しい、これが現実です。麻雀と別の職業の二足のわらじを履いている麻雀プロも大勢いますし、大会の出場費用で赤字になることがほとんどです。
しかし、ありがたいことにMリーグは年俸制、最低報酬も保証されているため、「たとえ仕事が少し減っても、なんとか生きていけるかな」と思える程度には生活基盤は安定しました。
つまり、お金って本当に大事ということ。「お金の話をするなんて、はしたない」という意見もあると思いますが、お金は生きていく上で欠かせないものだし、これもきれいごと抜きの真実だと思います。
もちろん、お金はあればあるほど幸せなわけではないけれど、私はめったなことでは散財しません。
思い返せば学生時代、下北沢駅前のマクドナルドでアルバイトをしていた頃は、バイト代はほぼすべて貯金に回していました。子どもの頃も、お年玉を使った思い出はほぼありません。これは「なにがなんでも100万円貯めたい!」という目標に向かって貯金していたというよりも、お金が減っていくことに不安を感じていたから、なにかと我慢していたのだと思います。我慢しただけ、通帳の残高が増えていくのも嬉しかった(笑)。
お金は大切ですが、普段の生活でケチケチするのはイヤなので、疲れていたら迷わずタクシーに乗るし、忙しいときは少し割高でもUber Eatsを頼みます。お金よりも、時間や効率を優先したいですね。
麻雀プロというと、なんだかプライベートも破天荒、というイメージを抱く方もいるようですが、少なくとも私は「あぶない橋は渡らない」タイプです。今も貯蓄や積立投資をしていますし、5万円以上する買い物はほぼしません。お金の面では堅実派だと思います。
逆説的ですが、生活や心の「余裕」を生むためにも、毎日の生活では「ちょっとした我慢」をしているのかも。私はどうしても頑張ることのほうが得意だし、なにかと我慢しがちな傾向があるのですが、我慢と余裕は絶妙なバランス関係にあるのだな、とつくづく感じています。
写真/書籍『岡田紗佳 1stフォトエッセイ おかぴーす!』より