神奈川でも退職者が続出

また、ドライバーの分業化やセンターの集約化など本社の方針転換によって、都内の一部主管で大量離職が引き起こされていることを集英社オンラインは報じてきた(#4#7)。

しかし、前出の神奈川県のセンターに勤めるSDによると、「退職者が相次いでいるのは都内だけではない」と語る。

「神奈川主管では、去年の退職者数が過去最多でした。その理由として挙げられるのが、上層部からの執拗なコストカット。とにかく主管支店長が『稼働を絞れ』とうるさくて、これまで3人で担当していたエリアを2人で配らされるようになりました。前日の夜配が長引けば、(就業規則により)翌日の出勤時間を遅らせられるんですが、それでも一日の配達量は変わらないため、休憩時間も働き通しで配り続けなくてはならない日も珍しくありません」

ヤマト運輸の宅急便センター(撮影/集英社オンライン)
ヤマト運輸の宅急便センター(撮影/集英社オンライン)

休憩なしでも、システム上は休憩を取ったことにしないとセンター長から呼び出しを食らってしまうため、この男性も同僚たちも虚偽申告することが日常茶飯事だという。

「上層部が『ちゃんと休憩を取れ』と言ってもそれは表向きで、ドライバーが休憩を取れるような労働環境にしようという動きは一切ありません。結局、誰かが労基(労働基準局)に駆け込まないかぎりなにも変わらないでしょう。

都内の一部主管のように分業制が始まれば、今よりもっとドライバーにシワ寄せがくるのではないでしょうか」

今回報じた、

「早朝仕分けの人手不足により、ドライバーが配達を開始できていない」
「クロネコゆうメールでの差し戻しが頻発している」
「昨年、神奈川主管で過去最多の退職者」
「休憩時間について虚偽の報告をせざるを得ない」

という状況などについて事実かどうか、ヤマト本社に質問状を送ったところ、以下のような回答があった。

ヤマト本社の入った西新宿1丁目ビル
ヤマト本社の入った西新宿1丁目ビル
すべての画像を見る

「いずれのご質問も個別の事案のため、回答は差し控えさせていただきます。なお、一部のクロネコゆうメールにおいて、日本郵便さまへ引き渡しできていない事実は把握しております(中略)円滑なお取り扱いに向けて日本郵便さまと日々調整を進めております。

また、SD の役割・責任を明確化し、適所適材の配置を行うことで、適正な労働時間の管理、より働きやすい労働環境の構築、働きがいの向上に取り組んでおりますが、社員に関するご質問については、従来から回答を差し控えさせていただいております」


無謀なコスト削減によって生まれた現場の疲弊&退職ラッシュという負のスパイラル。混乱はまだまだ収まりそうもない。

※「集英社オンライン」では、宅配業者のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

#1<ヤマト運輸3万人委託終了>「ただのコストカット」「面倒くせえなとしか思わない」個人事業主の配達員のみならず、ヤマト正社員や郵便局員からも批難轟々。本社の回答は?
#2<ヤマト・3万人個人事業主切りで新事実>メール便仕分け担当の契約社員数千人もリストラ対象。「説明会は15分で終了」「ヤマトは人を大切にする会社じゃなかったのか」
#3〈クロネコヤマト“委託切り”騒動〉2万5000人超の契約終了が一転、「配置転換の打診」も当事者からは不満続出。「給料が減る」「ヤマトは何がしたいのかさっぱりわからない」
#4 <ヤマト運輸・現場が大混乱>“業務効率化”で正社員が一斉退職、人員補充は委託業者頼りの本末転倒「実はクール便の品質にも問題が起きていて…」
#5〈ヤマト委託・パート切り騒動〉「生活は大変になるけど…」約2.8万人が1月で契約終了。当事者たちに今の心境を聞いてみた。ヤマト社員は「本社はいったい何を考えているのか」
#6〈ヤマト運輸・現場大混乱〉「食中毒事故を起こしかねない」ドライバーの分業制でクール宅急便のシステムが崩壊「休憩時間は1分もなく、遅配連発で客に怒鳴られ…」荷物を玄関先に放置するドライバーも…時間指定遵守率は驚異の10%以下に
#7〈迷走するヤマト運輸〉「分業制にした意味なくね?」とドライバーの不満爆発。さらにセンター集約化で続出する退職者…現場は人手不足が高じ「休憩をとったと虚偽報告しています」〈ヤマトの回答は…?〉