もう少ししっかり考えなきゃいけないのでは?

しかし、元農林水産大臣の山田正彦氏(81)はこう警鐘を鳴らした。

「私はコオロギについては食べるべきではないと思っています。漢方医学大辞典ではコオロギは微毒であり、とくに妊婦には禁忌だとされています。昔からイナゴや蜂の子は食べても、コオロギは食べないですよね。少なくとも私は食べません」

山田氏といえば1993年から衆議院議員を5期務め、2010年6月に菅直人内閣で農林水産大臣に就任。現在は弁護士業の傍らTPPや食の安全、食料安全保障の問題などに取り組んでいる。

その山田氏が、そもそもコオロギの食品としての安全性に疑問があると、当時こう指摘していた。以下は2023年3月11日に掲載したインタビューの抜粋である。

「2018年9月に内閣府の食品安全委員会のホームページで『欧州安全機関、新食品としてのヨーロッパイエコオロギについてリスクプロファイルを公表』という情報が出されています。そこには動物衛生と食品安全において、著しいデータギャップが存在していてさまざまな懸念点が挙げられていました。

『総計して、好気性細菌数が高い』『昆虫及び昆虫由来製品のアレルギー源性の問題がある』『重金属類(カドミウム等)が生物濃縮される問題がある』などです。この件についてはさまざまな議論がされていますが、わざわざリスクの挙げられているコオロギを食べる必要はないと思っています」

取材に応じる山田元農水大臣(撮影/集英社オンライン)
取材に応じる山田元農水大臣(撮影/集英社オンライン)

コオロギの品種や加工方法にかかわらず、これまで食べられてきた歴史がない以上、何が起こっても不思議ではなく、安易に口にするのは「危ない」ことだと指摘する。

「徳島県の高校でコオロギを給食で試食したというのは新しくおもしろいことのように見えますが、食品安全委員会が出した情報を踏まえると、もう少ししっかり考えなきゃいけないのでは?と思ってしまいますね」

また、補助金の噂について尋ねてみると山田氏はこう話す。

「ある国立大学でコオロギのゲノム編集の研究を行っているけど、その研究所にはコオロギ食品で有名な企業のCEOが講師として名を連ねています。この研究に対し国の予算がけっこう使われているはずです(※この企業は『コオロギだからといって多額の補助金が別途出ることはありません』と回答)。

ゲノム編集というのは狙った遺伝子を意図的に変化させる技術ですが、まだ未知の部分が多すぎて安全とは言い切れません。2年前に私がアメリカに行ったときにある会社がゲノム編集の食用油を売りだしていましたが、今ではその会社の株価が10分の1に下がって、最終的にその食用油は販売中止になっていました。

ゲノム編集の食品ってアメリカでは全然売れないんです。そんなものに日本は今、予算をつけてどんどん取り入れようとしているわけです」