本記事では、筆者が特に物語にとって特に重要であると感じた「いくつか」についてのみ記載していこう。
それはシリーズの進行と共に、もっと言うと主要メンバーの成長や年代の進行と共に、ホーキンスの街もカルチャーも、しっかりと進行していくところである。
たとえば、ウィルをはじめとする少年たちが「ハマる遊び」。
1983年が舞台となるシーズン1で、彼らはTRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」に夢中だ。これはあらかじめ作成したシナリオを元に、プレイヤーがダンジョン・マスターとトークしながら配役を演じ、物語をプレイするボードゲームであり、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」など、アナタがよく知るRPGの元祖だといえる。ダンジョンに巣食うモンスターを撃退できるか否かは、「ファイター」や「ウィザード」といった様々な能力を持った配役を演じるプレイヤーの協力や戦略、そしてサイコロを振るアナタ自身の運次第だ。
1970年代に登場し、爆発的にヒットしたこのTRPGは、本シリーズの根幹を成す要素であり、また1980年代を代表する映画監督スピルバーグの『E.T.』に対する熱いオマージュでもある。本シリーズの冒頭は、『E.T.』そのものと言っても良い。
ちなみにドリュー・バリモアやヴィン・ディーゼルなどなど、各界の有名人の中にも多くの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」ファンが存在。幾度かの映像化もされているが、最新映画の製作がクリス・パイン主演で進行中(2023年公開予定だとか!)
しかしこの「子供たちがハマる遊び」も、ドラマのシーズンの移ろいと共に変化していく。
1年後の1984年を描くシーズン2では、自宅でテーブルを囲むTRPGから、ゲームセンターのアーケードゲーム「ドラゴンズレア」や「ディグダグ」へ、映画館で上映される映画も『ターミネーター』(1984)へと移り変わる。
さらに1年後の1985年を描くシーズン3では、ホーキンスの街にも大規模商業施設「スターコート・モール」が登場。その映画館で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)を見る…かと思いきや、同時期公開の『死霊のえじき』(1985)を見る少年たちに、筆者は思わずガッツポーズした。ショッピング・モールといえばジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』、そして『死霊のえじき』もまた、ロメロ監督作品だからである。
ちなみにこの「スターコート・モール」は、1983年頃に建設されたジョージア州のグウィネット・モールを改装し、物語の舞台として使用しているのだが、「ショッピング・モール」がアメリカにもたらした意味を考えると、シーズン3はさらに興味深い。
1970〜1980年代に起きたショッピング・モールの隆盛は、地域の小さな商店をことごとく潰し、アメリカを破壊したものでもあるからだ。行く場所がなくなり、人々が目的もなくうろつくモールの異常性を憂いたロメロ監督が描いたのが『ゾンビ』であり、そしてシーズン3の舞台は…と考えてみると、巨大なアメリカ文化の栄華と憂いが顕(あらわ)になる。