外部指導者を招聘しての部活動改革
現時点ではバスケットボール、サッカー、ソフトテニス、野球、音楽がそれに該当し、中体連など規定をクリアすれば大会にエントリー可能。地域の指導者や団体が白新中に申請し、同校の運営協議会の承認を経て活動を開始できる流れで、今後はクラブ数を増やすことを目指す。
システムのメリットは、生徒の選択肢の多さだ。「放課後はドッジボール。17時からはサッカー」「放課後から19時まで通しでバスケットボール」といったように、白新中の部活動改革には、合理化と多様性がある。
堀が標榜するのは、生徒たちが自発的かつ精力的にスポーツや文化に溶け込めるコミュニティの構築だ。それはつまり、生徒を誰ひとりとして置き去りにしないことに結びつく。
「真剣に打ち込む生徒であれば、放課後から時間をフル活用して取り組めばいいし、そうじゃない生徒は遊び感覚で放課後の1時間を過ごしてもらうだけでいいんです。大事なのはスポーツと文化活動にアクセスしやすく、楽しめる環境を整えることなのかなと」
選手として、監督としても成果を上げた。その過程では痛みも伴ってきた。そんな堀が描く改革だからこそ、ただの絵空事ではない説得力があり、その意義に深みが加わる。
「一生懸命にやりたい生徒にとって僕はいいコーチなのかもしれないけど、悪いコーチの側面もあったと思うんですね。中学あたりまでだと初心者の生徒もそれなりに入部してくれるんです。彼らにとって『この環境がプラスなのかな? 入部したからといって指導者の価値観を押しつけるのは傲慢じゃないか』と、だんだん思うようになっていったんです」
白新中の部活動改革。おそらくは多くの課題が浮き彫りとなり、その度に外部からの指摘だって受けるだろう。
だが、堀に悲観はない。「それも、産みの苦しみだと思って」と困ったそぶりを見せながらも、発する言葉は実に明るい。
「まずはやってみる、続けることが大事なので。そのなかで問題点が生じれば、真剣に向き合って改善していければいいというか。将来的には学習塾のように、世の中に認知してもらえれば素敵ですよね。いい講師がいれば、優秀な学生が集まる。要は、白新中学だけではない受け皿がたくさんできれば、部活動改革も『塾に通うことと同じくらい価値のあることだ』と思ってもらえるはずなんです」
部活動改革によって、おそらく堀はこれまでのようにバスケットボールの指導に熱を入れる機会が少なくなると予想される。
物足りなさはないか? 堀に尋ねると、今度は弾力性のある言葉が返ってきた。
「教員の自分がクラブを持って日本一になりました、だと、これまでと変わらないんですよね。それよりも、子供たちにとって理想の環境を少しでも増やしていく、地域でスポーツと文化を楽しめるコミュニティを作っていく。今はそこに楽しさを覚えているんで」
改革者は勇ましく、意志を未来に繋ぐ。
文/田口元義
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