投資マネーで愛好家が置き去り

東京都内で2店舗を運営する「BIG FUN(ビッグ・ファン)」高円寺店の河田祥さんは「古いバイクの価格は少し落ち着いてきたように感じます」と語る一方、「人気車種はこれからも高値をキープしていくのではないか」と予想している。

「旧車の絶版車を扱っているショップで1000万円をつけている車両もありますが、そういう高額なバイクが頻繁に流通しているかといえば、それは疑問ですね。

ときどき掘り出しものがオークションに出てくるので、最高値は伸びていると思いますが、うちの店に関しては、中央値はそれほど変わっていません。でもカワサキZ1やZ2などの人気車種は高値が続いていくと思います。

あと、映画『トップガン マーヴェリック』(2022年)でトム・クルーズが乗っていたカワサキGPZ900R(1984年)とニンジャH2カーボン(2015年)などもこれから高くなるでしょうね」

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福地さんが愛車のレストアやメンテナンスを依頼している「BIG FUN」の河田祥さん(右)らスタッフたち

「MotoUP」岩槻店でメカニックを務める田邉さんも、河田さんと同じ意見だった。

では今後はどんな車種が値上がりしていくのだろうか。田邉さんが話す。

「メーカーを問わず、2ストロークバイクは全般的に上がっていくと思います。ホンダではCB系はカワサキのZ系に比べるとまだ安いので上がるでしょう。

ホンダは排ガス規制に適応するために4ストローク4気筒エンジンの生産中止を決めました。1992年に登場したCB400スーパーフォアは教習車としてゴロゴロあったのですが、今後、値上がりしていくと思います。

ヤマハRZは現在も部品が供給されていますし、同じ空冷の2ストロークエンジンを搭載したカワサキのマッハに比べるとまだ安い。もっと上がると思っています。

あとはリターンライダーが若い頃に読んだ『湘南爆走族』や『特攻の拓』などの漫画に登場したバイクは価格が下がることはないでしょう」

旧車オーナーの福地さんは「古いバイクは現存する台数が少ないのである程度、高くなるのは仕方ない」と言いながらも、今の異常な高騰に対しては複雑な思いを抱いている。

「旧車は、乗りたい人がちょっと背伸びすると手が届くくらいの価格が理想だと思いますが、今は投機マネーが入り込んで異常な価格をつけ、本来ほしい人がまったく手の届かない状態になっています。

古いバイクは音や振動が心地よく、乗っていても本当に楽しいんです。オートバイは愛でるものであり、乗って楽しむものです。投資の目的にすべきではありません」

バイク愛好家を置き去りにした旧車高騰の波は、しばらく続いていくのかもしれない。

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取材・文/川原田 剛
撮影/五十嵐和博、村上庄吾