「みんなのため」もじつは「自分のため」

「集団のために」という意識は、より正確には「集団の中にいる自分のために」であり、それほどに文化的自己観が、人の価値観や考え方に与える影響は支配的で強力です。

だから、自分のことを優先するためには、まずは集団の一員としての自分ではなく、個人としての自分について考え、一人だけでの「自分らしさ」を作っていくことが大切になります。

日本語には、自分のことを指す単語がいくつもあり、周囲の状況、場面、相手などによって使い分けます。私、自分、俺、僕、当方、小生……などさまざまに変わることができて、自分を表す主語がなくても文章が成立して、意味を成すこともできます。

「悔しさ」が先か「申し訳なさ」が先か…日本人が失敗するとすぐ謝ってしまう「みんなに悪いことをした」という意識_4
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一方、英語における「自分」は基本的に「I」だけで、周囲の状況、場面、相手によって変化しません。また、文章において省略されることも通常はありません。こうした言葉の違いは、文化におけるコミュニケーションの違いに繋がるとされており、その意味でも、やはり日本における「自分」は、優先順位の低い存在として考えられやすいといえるでしょう。

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文/永井竜之介
写真/shutterstock

分不相応のすすめ
永井竜之介
「悔しさ」が先か「申し訳なさ」が先か…日本人が失敗するとすぐ謝ってしまう「みんなに悪いことをした」という意識_5
2023/11/20
¥2,200
216ページ
ISBN:978-4911194003
「これくらいが自分にはちょうどいい」。生活でも仕事でも無意識に作ってしまう「分相応」の自己評価。じつはこれが「壁」となり、挑戦や成長が妨げられている。その原因は「日本らしさ」にあった。マーケティングの科学的知見を背景に、自分の「分相応の壁」を破り、周囲の空気に負けずに、現状を打開するためのマインドとメソッドを提示。「自分はこんなもの」と悟ったように見えて、「本当は自分を変えたい!」という諦めきれない本音を多くの人が隠し持っている。行き詰まりを感じて思い悩む現代人に必読の一冊。
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