3日間ほど『SHIBUYA TSUTAYA』前に寝泊まりしゲットしたXbox
現在、最新作『勝手に死ぬな』が公開中の映画監督、天野大地氏は「『SHIBUYA TSUTAYA』でバイトして手にしたお金で映画を作った」という。
「高校時代に足繁く通っていたのは新宿TSUTAYA。新宿も渋谷も邦画の品揃えは他に類を見ませんでした。昔の邦画やアジア映画、ヨーロッパの作家の映画の品揃えは群を抜いていました。高校卒業後、僕はアメリカの映画学校に留学しましたが、卒業制作映画を撮るために一時帰国し、2010年から2011年の10カ月間に『SHIBUYA TSUTAYA』でバイトしました。
僕は当時の人出の多かったレンタルコーナーではなく、DVD販売コーナーのレジ打ちを任されてました」
当時の『SHIBUYA TSUTAYA』のバイト仲間には映画好きやこの世界を志す人たちが集まっていたという。
「ここでバイトをすると50円でDVDを借りられるとい特典もあり、週4、5日はシフトに入ってお金を貯めまくってました。それで70万円ほど貯めて52分の卒業制作映画『まぼろし』を撮ったんです。ここのバイト仲間は役者志望や映画美学校に通う子もいて、クリエイター志望も多かった。今も付き合いのある脚本家の畠山隼一さんは元々はここで出会ったバイト仲間です。映画に携わる仲間を『SHIBUYA TSUTAYA』で集めたって感覚は今もありますね」
また、『SHIBUYA TSUTAYA』といえば数々のイベントが行われてきた。2002年2月22日に発売されたマイクロソフトのビデオゲーム機『Xbox』発売日には、同社の創設者、ビル・ゲイツ氏もやってきた。当日のイベントゲストとして出演したのはX JAPANのリーダー、YOSHIKI。
記者は3日間ほど『SHIBUYA TSUTAYA』前に寝泊まりし、何千人もの行列のなかで2番目をゲットし、あまりの興奮にYOSHIKIの目の前を素通りして『Xbox』を持つゲイツ氏に駆け寄った。司会進行していたDJの赤坂泰彦氏に『おっとお、YOSHIKIは無視かあ!』とつっこまれたのが、今となってはいい思い出だ。
10月31日から、『SHIBUYA TSUTAYA』は全フロア改装工事に入るため、一旦休業となる。来春のリニューアルオープン後は500席を有するカフェ&ラウンジとなり、さまざまなイベントが行われる空間になるという。
令和の『SHIBUYA TSUTAYA』もまた、多くの人々が思いを寄せる場となってほしい。
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班