映画でリアリティが増した元アイドルの葛藤
――完成した映画をご覧になったときの率直な気持ちはいかがでしたか?
大木(以下同) まずは、主演の深川麻衣さんが一人の女性として、人生に迷う安希子役をとても繊細に演じてくれたことに感謝しました。
私がSDN48として活動していたのは、実は2年半くらいで、センターの人間だったわけでもなく、アイドルとして花が開いていたわけでもありません。でも深川さんは長年、乃木坂46の中心的メンバーでいらっしゃったので、彼女が演じることで、元アイドルのセカンドキャリアや人生の迷いが、いい意味で、よりリアルに表されていると思いました。
また、穐山(茉由)監督が、アラサー女の叫びや、安希子とササポンとの絶妙な距離感など、原作の要素を丁寧に切り取ってくれたことも印象的でした。驚いたのはササポンハウスの再現度です。特にリビングの間取りや家具の配置は、本物そっくりでした。
「元アイドルの崖っぷちパパ活疑惑」と言われたことも
――物語の本質を理解した上で、世界観が再現されたわけですね。
『つんドル』という作品を深いところまで理解して、魂を注いでくださったと思います。原作小説を出したとき、「元アイドルの崖っぷちパパ活疑惑」という取り上げられ方をされそうになったこともあったのですが、出版社さんも、映画のスタッフの方々も、私が歩んできた人生をネタ化するのではなく、30歳前後の女性の生きづらさを伝えたいと、真摯に作品に向き合ってくださったので、方向性がブレることはなかったです。