人と比べてしまうことはある
──林さんはライバル意識を持ったりすることはありますか?
あまり言いたくないんですけど、かなりありましたね。というか、今もあります。芸人さんや俳優の仕事をしている人は、そこに悩まされる人も多いと思います。何がいいか悪いか正解がない分野だからこそ、人と比べてしまうのかもしれません。ただ、そういう気持ちが原動力になっていることも間違いないので、必要なことだとも思っています。
──先ほど、ネガティブな要素やコンプレックスを抱えるたけしさんに共感できたとおっしゃっていました。林さんが感じる、ご自分のコンプレックスとは?
人の顔色をうかがってしまうところですかね。自信を持っているタイプではないので、自分が発した言葉によって人がどう感じたのか、必要以上に考えてしまう“気にしい”なところはあります。
例えばお芝居について監督と話をしたときに、あまり意思疎通ができなかったと感じると、「言葉を間違えたかな」とか、「もっと違うやり方があったのかも」と考えてしまう。もう、本質的にそういう性格なんです。
──周囲の方からは、なんと言われますか?
「真面目だね」と言われることは多いです。僕のことをすごく気にかけてくれる人は「そんなに気にしなくていいよ」と言ってくれますし、「自意識過剰だよ」と言ってくれる人もいます。
──真面目だからこそ悩むことも多いと思いますが、悩みを手放す方法は?
物理的に悩みから離れることですかね。走ってみたり、どこかに出かけてみたり、まったく違う時間を意識的に持つことはすごく大事だと思っています。
あと、やっぱり作品に救われることも多いんです。開幕前ですけど、すでに『浅草キッド』という作品や、役作りで出会ったたけしさんの著書からものすごく勇気づけられていて、本当にこの役に出会えてよかったと思っています。
それに、お芝居をしているときだけは“気にしい”な性格から離れられるというか、自分じゃないから気持ちが少し楽なんです。だからこそ、この仕事は自分に合っていると思いますし、やっていて楽しいと思えるんです。
──舞台が終わってから、プライベートでしたいことは?
コロナ禍でずっと海外に行けなかったので、旅行に行きたいですね。ドラマ『VIVANT』のモンゴルロケで久々に海外に行ったんですけど、空港にいるだけでウキウキしたりして(笑)。すごくリフレッシュできました。特に理由はないけれど、今はヨーロッパをちゃんと回ってみたいです。日本を離れて、ひと息つけたらいいですね。
取材・文/松山梢 撮影/石田壮一 ヘアメイク/竹井 温(&’s management) スタイリスト/菊池陽之介
『浅草キッド』
ある夏の浅草。大学中退後、ふらふらと街を彷徨う、まだ何者でもない青年・北野武(林遣都)は、流れ着いたストリップ小屋・フランス座で働くことになる。興行の責任者である深見千三郎師匠(山本耕史)に弟子入りした武は、芸人仲間と苦楽を共にし、力強く生きるストリッパーや浅草の人々と交流しながら、芸の道で生きていく覚悟を決める。しかし修業を続けるうちに武は時代の変化に逆らえず苦境に立たされ、ある決断を余儀なくされる。やがて、武が芸人として一世を風靡する一方、師匠の深見は……。
原作:ビートたけし
脚本・演出:福原充則
音楽・音楽監督:益田トッシュ
出演:林遣都 松下優也 今野浩喜 稲葉友 森永悠希 紺野まひる あめくみちこ/山本耕史ほか
公式サイト https://www.ktv.jp/asakusakid/
林遣都
1990年12月6日生まれ、滋賀県出身。2007年に映画『バッテリー』で俳優デビュー。映画『DIVE!!』『風が強く吹いている』『しゃぼん玉』『私をくいとめて』『犬部!』『恋する寄生虫』、ドラマ『荒川アンダーザブリッジ』『火花』『FINAL CUT』『おっさんずラブ』『スカーレット』『初恋の悪魔』『VIVANT』、舞台『風博士』『フェードル』『セールスマンの死』など話題作に多数出演。映画『隣人X-疑惑の彼女-』(12月1日公開)、『身代わり忠臣蔵』(2024年2月9日公開)が待機中。