「由伸さんのタイトル独占を阻止したい」

本格派と技巧派のハイブリッドは、現代野球のトレンドでもある。日本人でいえば多彩な変化球を持ちながら160キロ近いボールを投げるダルビッシュ有(カブス)が代表格。そして何より、宮城のチームメイトには「NPB最高のハイブリッド投手」がいる。

山本由伸――。

150キロ中盤の速球を持ちながら、多彩な変化球のすべてが“決め球”になりうる。昨季まで最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振の「投手四冠」を2年連続で達成。今季も4部門すべてでトップに立ち、空前絶後の「3年連続投手四冠」を射程に捉えたNPB最強投手だ。

プルペンで投げ込む宮城(写真左)と山本(写真中央) 写真/共同通信社
プルペンで投げ込む宮城(写真左)と山本(写真中央) 写真/共同通信社

宮城が一軍でローテに入った2021年以降、チームのエースの座はつねに山本のものだった。当然、宮城もそれは認めている。一方で、決して白旗を上げるつもりもない。2021年シーズン中、当時大ブレイクしていた高卒2年目の宮城をインタビューした際、こんなことを語ってくれた。

「由伸さんのタイトル独占をひとつでもいいから阻止したいんです」

朴訥な印象の20歳の若者から出た言葉に、思わず息をのんだ。同時に、投手としてのプライドを感じることもできた。ただ、結果的にこの年、宮城は山本からタイトルを奪うことはできなかった。

時は経ち、今春のインタビュー。当時の話を振ると、宮城は笑顔でこう返してくれた。

「今でも、『由伸さんがいなければ僕がタイトルを獲れたのに』と思っていますよ(笑)」

と同時に、偉大な先輩に対してこんな言葉も残してくれた。

「由伸さんがいるから頑張れるし、上を目指そうという思いを持ち続けることができる。本当にすごい投手だし、最高のお手本が身近にいるのは幸せだなと思っています。でも、やっぱり僕も獲れるならタイトルは獲りたいし、今年も由伸さんのタイトルを奪いたいという気持ちは持っています」