75年ぶりに在日大使館に国防武官着任

このように、近年、日本とフィンランドの防衛関係は急速に深化しているが、こうした流れを受けて、2020年に東京のフィンランド大使館に国防武官が着任した。日本に専任の武官が着任するのは、なんと75年ぶりのことだった。

フィンランド国防軍から派遣されたのが、陸軍所属のキンモ・タルヴァイネン大佐であった。

タルヴァイネン大佐とは、筆者も個人的な親交がある。筆者との会話の中で、大佐は日露戦争の英雄である東郷平八郎元帥に対して度々敬意を表するなど、日本に対して強い関心を持ってくれている。フィンランド軍は素晴らしい人物を日本に派遣してくれたというのが、筆者の率直な感想である。

フィンランドの防衛技術が日本の領土を守る!? 75年ぶりに国防武官が在日大使館に着任。防衛軍制服組トップと国防相が立て続けに訪日する異例の事態も…_3

タルヴァイネン大佐が日本文化についても興味があるということで、筆者が茶道を稽古していると伝えると、以前からぜひ一度は体験してみたかったという話が、会食中に飛び出したことがあった。

そこで筆者から、自分自身の師匠である町田宗隆先生(裏千家業躰)にお願いをし、京都花園でお茶を一服召し上がってもらった。

町田先生は、フィンランド渡航時に現地で求めた道具で、茶室をしつらえてくださった。和の空間に、フィンランドのテイストが添えられ、客人を迎える準備が整った。タルヴァイネン大佐は、編笠のような道具についてカレリア地方のものではないだろうかという見立てを披露するなど、町田先生のしつらえをきっかけにして、話にどんどん花が咲いた。

フィンランドの軍人は、日本有数の茶人からフィンランドに対して示された敬愛の念をしっかりと受け止め、お互いの心が通い合った。日本のもてなしの心は、世界に通用するものであり、日本人が誇るべきものであることを改めて感じさせられた茶席だった。