自治体と葬儀会社による遺骨の押し付け合い
後者は、自治体が葬儀会社から遺骨を引き取って保管するということである。
自治体が直面するのも保管スペースの問題だ。最初は役所内の空いている部屋やロッカーに置いていても、数が増えればそうはいかなくなる。自治体が新たにスペースを設ける場合、大抵は自治体の所有地を利用する。未使用の古い公民館だとか、廃校になった学校などに移動させるのだ。私が取材したケースでは、役所の敷地内にプレハブを建てて、そこに何十という遺骨を置いていた。
先の葬儀会社の社員は次のように語る。
「あまり言いたくありませんが、自治体と葬儀会社がご遺骨の押し付け合いをしているようなものですよね。一度かかわってしまったら、どちらかが引き受けなければならなくなります。亡くなった人にとっては、尊厳もへったくれもありませんが、それが現実なのです」
現場の人ならではの本音だろう。生活困窮者とて人間である。生前何かしらの理由で仕事がうまくいかなくなったとはいえ、死後も遺骨をたらい回しにされ、挙句の果てに物置場や廃校に埃(ほこり)をかぶって何年も放置されるなどということはあってはならない。
だが、残念ながら、今の日本ではそうしたことが現実に起きてしまっている。これが、世界第三位のGDPを誇りながら、世界ワースト四位の相対的貧困国日本の実相なのである。
今後格差が拡大していく中で、このような場当たり的な対応がどこまで通用するのか。根本から日本の制度を見直さなければ、明るい未来は見えてこないだろう。












