恐怖心から何でも喋る

――人間を納品しただけではお金になりませんよね?

さらわれた人間は、縛り上げていますから、手下が、ちょっとした拷問を加えます。といっても、狛江のお年寄りをやったような手荒な拷問じゃないです。縛られて目隠しされていますしね、そこまでしなくても恐怖心から何でも喋ります。我々は、誰かに依頼されているような感じで話します。泥棒稼業で食っているようなボスなら、どこかで恨みを買っている覚えがあるでしょうから、勝手に邪気を回しています。尋問して、ヤサ(住居)を聞き出します。そしたら、ヤサにお邪魔します。

「イラン人は強いからこっちも7~8人必要。中国人が警戒するパーソナル・スペースは日本人や韓国人よりも半径が広い」タタキ専門の元半グレが語る外国人をタタくための鉄則_3
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――そして、根こそぎ強奪するのですね。

いや、それは我々がするのではありません。普通に引っ越し業者に電話して、そのヤサの人間を装って引っ越ししたいと言えば済みます。その時は、近くにレンタル倉庫を借りています。荷物は、そこに運ばれるのです。10数万円払えば、引っ越し業者が荷物を分類してくれる。衣類は衣類のボックスに。皿や食器は壊れ物のボックスにね。ですから、ここで何も起きなければ、レンタル・ボックスに全てのモノが運ばれる手はずになっています。

レンタル・ボックスに運ばれたら、我々のメンバーが、それぞれの盗品を売り捌きます。売り捌き先は、生活用品ならリサイクル店です。ブランド品は、ブランド屋に買い取ってもらいます。これで、倉庫は空になる。

通帳や高級時計などの貴重品は、引っ越し業者が丁寧にも小さい箱に入れておいてくれます。そこで、もう一度、ボスをちょっと殴れば、暗証番号なんかチョロいもんで、すぐに教えてくれます。我々は、それを引き出して仕事は完了です。これで、1件三300万〜400万円の利益が出ます。

たしかに、匿名の闇バイトの走りかもしれません。しかし、我々は、闇バイトに応募してきた匿名の人間には、納品までしかやらせてはいません。最後は、自分たちでやっていました。最後の詰めで、間違いがあるといけませんからね。

闇バイトの実態と勧誘システム
詐欺電話をかける「ハコ」や「ルーム」のリアル
増え続ける外国人半グレ組織

文/廣末登
写真/shutterstock

闇バイト 凶悪化する若者のリアル (祥伝社新書 683)
廣末 登
「イラン人は強いからこっちも7~8人必要。中国人が警戒するパーソナル・スペースは日本人や韓国人よりも半径が広い」タタキ専門の元半グレが語る外国人をタタくための鉄則_4
2023年7月3日
¥1,023
224ページ
ISBN:978-4396116835
「闇バイト」がなくならないワケとは?

二〇二三年一月一九日、東京都狛江市に住む九〇歳の女性が自宅で殺害されているのが見つかった。女性の遺体には激しい暴行の跡が見られ、これまでとは次元の違う強盗殺人事件として世間を震撼させた。
本件をきっかけに注目を集めたのが、「闇バイト」といわれる犯罪だ。指示役に集められた素性のバラバラな集団によって行なわれる犯罪で、同種の事件は後を絶たない。

中でも詐欺よりも手っ取り早く稼げる「タタキ(強盗)」の増加が危険視されている。本書では、非行経験のある犯罪学者が当事者たちを取材。

闇バイトを取り仕切る半グレや犯人の更生に従事した保護観察官の声から見えてくる、その真実とは。最終章では、闇バイトを生み出す日本社会の闇を分析。失うもののない「無敵の人」を生み続ける構造に警鐘を鳴らす
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