恐怖心から何でも喋る
――人間を納品しただけではお金になりませんよね?
さらわれた人間は、縛り上げていますから、手下が、ちょっとした拷問を加えます。といっても、狛江のお年寄りをやったような手荒な拷問じゃないです。縛られて目隠しされていますしね、そこまでしなくても恐怖心から何でも喋ります。我々は、誰かに依頼されているような感じで話します。泥棒稼業で食っているようなボスなら、どこかで恨みを買っている覚えがあるでしょうから、勝手に邪気を回しています。尋問して、ヤサ(住居)を聞き出します。そしたら、ヤサにお邪魔します。
――そして、根こそぎ強奪するのですね。
いや、それは我々がするのではありません。普通に引っ越し業者に電話して、そのヤサの人間を装って引っ越ししたいと言えば済みます。その時は、近くにレンタル倉庫を借りています。荷物は、そこに運ばれるのです。10数万円払えば、引っ越し業者が荷物を分類してくれる。衣類は衣類のボックスに。皿や食器は壊れ物のボックスにね。ですから、ここで何も起きなければ、レンタル・ボックスに全てのモノが運ばれる手はずになっています。
レンタル・ボックスに運ばれたら、我々のメンバーが、それぞれの盗品を売り捌きます。売り捌き先は、生活用品ならリサイクル店です。ブランド品は、ブランド屋に買い取ってもらいます。これで、倉庫は空になる。
通帳や高級時計などの貴重品は、引っ越し業者が丁寧にも小さい箱に入れておいてくれます。そこで、もう一度、ボスをちょっと殴れば、暗証番号なんかチョロいもんで、すぐに教えてくれます。我々は、それを引き出して仕事は完了です。これで、1件三300万〜400万円の利益が出ます。
たしかに、匿名の闇バイトの走りかもしれません。しかし、我々は、闇バイトに応募してきた匿名の人間には、納品までしかやらせてはいません。最後は、自分たちでやっていました。最後の詰めで、間違いがあるといけませんからね。
闇バイトの実態と勧誘システム
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文/廣末登
写真/shutterstock