父を本気にさせた映画出演。

女子高生サーリャの目を通して描く、日本のクルド人難民の現実『マイスモールランド』【川和田恵真監督×嵐莉菜さんインタビュー】_o

「私が父に対して凄いなって思ったのは、映画に携わる前は、『パパ、ちょっとやせた方がいいんじゃない』って家族が何度言っても一切動かなかったのに、映画のためには頑張って、役柄的にすごく痩せたんです。撮り終わった後でも、ダイエットが続いていて、今は少しスリムになって、健康的にもなって、映画に感謝しています(笑)。こんなに本気になって、凄いなと父を見直しました」

川和田「サーリャ一家のみなさん、それぞれ素敵な演技だから、違う背景の役者さんを起用したと思われんですけど、ラストのクレジットで同じ苗字の人が並ぶことで、あれは家族なんだとわかったときに驚かれるんです」

女子高生サーリャの目を通して描く、日本のクルド人難民の現実『マイスモールランド』【川和田恵真監督×嵐莉菜さんインタビュー】_p

──弟さんは小さいんですけど、お父さんが入管に収容され、家からいなくなってしまった悲しみとか実にリアルな感情を出していましたよね。

川和田「本当に、徐々に自分のお芝居がわかるようになって、カットかかった後に、『今、間違えちゃった』とか、『今の違った』とか自分で言うようになって、あるときは『NGの理由を教えてくれ』と変わっていきました。本当の家族だからこそ出た感情もすごくあります。父娘の喧嘩の場面もそうだし、入管に収容された父親との面会の場面でも、本当のお父さんが面会室のアクリル板の向こうにいるという状況が、この映画にとっては大きなものだったと思います」

インターナショナルスクールの高校生試写で思わずかかった、「聡太、いけ!」の掛け声

女子高生サーリャの目を通して描く、日本のクルド人難民の現実『マイスモールランド』【川和田恵真監督×嵐莉菜さんインタビュー】_p

──余談ですが、バイトを通して親しくなった聡太に対して、サーリャが親愛の情でクルド式の挨拶として頬にチークキスをしますが、演じた奥寺さんによると、『サーリャに対しての理解はある。でも、自分が彼女のためにどうした方がいいのかっていう思いで頭がいっぱいいっぱいで、何かリアクションは出せなかったと思う』と話されていて、あの手も足も出ない感じが実に聡太らしくていいなと感じたのですが。監督は現場では、お二人の感性を優先したということですが。

「あのシーンは、一度、川のところで、ハグをするパターンの芝居も一瞬、やってみるっていうサジェスチョンはあったんです」

川和田「私の中では、聡太とサーリャの関係性は、ボーダーラインを越えたいけど、今、越えることができない二人ということなので、それはないなと。『越えたい』という目線と、手のつなぎは考えていたんですけど。でも、自分の中には記憶にないくらい、ハグの可能性はなかったです。

女子高生サーリャの目を通して描く、日本のクルド人難民の現実『マイスモールランド』【川和田恵真監督×嵐莉菜さんインタビュー】_q

──奥平さんも、あそこでハグは出来ないって言っていました。

「手も足も出せない感じがでてましたね(笑)」

川和田「奥平くんが理解してくれていた聡太らしさがすごく出ていましたね。こないだ、インターナショナルスクールで高校生の試写をした時、私はその場に立ち会ってはいなかったんですけど、そのシーンで、『聡太、いけ!』って掛け声があがっていたそうです(笑)。

女子高生サーリャの目を通して描く、日本のクルド人難民の現実『マイスモールランド』【川和田恵真監督×嵐莉菜さんインタビュー】_r

──やっぱり(笑)。それ、私の声じゃないですよ(笑)。

「ええ! 高校生試写で? めっちゃ、面白いです(笑)。私もその場に参加したかったな」

──そこで、ガッチリ強烈に抱きしめるキャラクターじゃなかったから、奥平さんを起用されたんですね?

川和田「その通りです(笑)」